
■ 第218話 ■「SHOGUN」ロスが止まらない
▶ちょっと脱線。ハリウッド制作の連続ドラマ「将軍SHOGUN」。ディズニープラスの独占配信だったから見られなかった人も多いだろう。筆者、細切れながら何とか鑑賞した。日本語メインの字幕ドラマにかかわらず欧米で大ヒット。プロデューサーは真田広之氏。同氏は過去ハリウッド映画に出演する度、西洋人目線、日中ゴチャ混ぜ違和感だらけの日本描写に口惜しい思いをしてきた。今回プロデューサーに抜擢され、日本の姿を忠実に再現するよう注力した。言の葉も、所作も衣装も美しい。所々ミニ「んなアホな」も散見されるがそんな些事がぶっ飛ぶほど面白かった。
▶物語は関ヶ原の合戦直前に日本に漂着した英国人ジョン・ブラックソーンが将軍の座を巡る陰謀策略の渦に巻き込まれていくフィクション。英国出身の作家ジェームズ・クラベルの「SHOGUN」が原作だ。ブラックソーンにはモデルがいる。関ヶ原の合戦直前、大分の海岸に漂着した英国人ウィリアム・アダムスだ。家康に重用され帆船を造った。三浦半島に所領を得て三浦按針を名乗った。按針とは水先案内人の意。家康の死後、幕府から冷遇された。妻子が待つ英国に戻る機会があったが英司令官と反りがあわず辞退。日本にも妻子がいた。愛人がいた説もある。落馬で負傷し、55歳の時に長崎県の平戸で死んだ。

▶「将軍」を書いたジェームズ・クラベル自身の人生もまた劇的だ。第2次世界大戦初期、マレー沖でクラベルが乗っていた船が轟沈。オランダ船に拾われたものの武器も与えられずジャワ島に置き去りにされた。日本軍の捕虜となりシンガポールのチャンギ刑務所に収監され、そこで終戦を迎えた。48年にバイク事故で重傷を負って退役、脚本家としての道を歩み始める。大ヒットした映画「大脱走」や「ハエ男の恐怖」の脚本も担当した。戦後15年以上にわたり誰にも戦時中のことを話さなかったという。心に傷を負いながらもアジア史に興味を抱いた。そんなクラベルが日本の戦国時代を3年間猛研究して書き上げたのが「将軍」だ。原作を読んでいないので確かなことは言えないが、戦時中の体験から決して日本に好印象を抱いていたとは思えないクラベルが私怨を含めず封建時代の日本を描いたとしたら見事だ。そして2度に渡って映像化された「将軍」は世界中の人々を魅了した。
▶改めて映画「ラスト・サムライ」を鑑賞した。サムライ最後の戦いとなった西南戦争と西郷隆盛をモデルとしたもので再び号泣。「将軍」も「ラスト・サムライ」も激動期の日本で西洋人が重要な役割の一端を担ったかのように描いた白人目線のファンタジー作品。訳ありの美しいおねえ様たちとのロマンスもお約束。史実や時代考証に忠実で生真面目な日本人作家には到底書けない妄想劇。いいんだよ。エンタメだもの。返歌として誰かサムライ主役で清教徒革命、書かんかな。もちろん美しい貴族の娘とのロマンス付き。
▶「将軍」で宇佐美

藤様を目撃したい人は、下動画をご覧ください。
週刊ジャーニー No.1340(2024年5月2日)掲載
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