■ 第197話 ■ソソソソソドムとゴゴゴゴゴモラ
▶「旧約聖書」の創世記を見詰めているが、今号は一部読者に不快感を抱かせる可能性がある。嫌な予感がする人は読み飛ばそうぜ。前号でアブラハムの90歳の妻サラに受胎を告げた謎の3人の男の話をした。彼らは他に重要な任務を帯びていた。それは男色や生殖器以外の性交、獣姦の蔓延など黒い噂があるソドムの町を調査し、事実であった場合、住民ごと町を焼き払うというものだ。男3人のうち1人は神で2人は天使とする説が有力らしい。ソドムには甥のロトがいる。善人まで殺戮するのはあんまりだ。そこでアブラハムは3人に尋ねた。「あの~、町に善人が50人いたらどうなります?」「善人が50人もいるなら滅ぼさん」。「40人なら?」「40人か。滅ぼさんかな」。その後も30、20と段階的引き下げ交渉が続き最終的に10人で手が打たれた。神も天使も案外優柔不断だった。3人はソドムに向かったが辿り着いたのはなぜか天使2人だけ。神様どこ行った?ソドムで妻と娘2人と暮らしていたロトはなぜか天使2人を見つけて家の中に招き入れ、食事を与え、寝床を用意した。
▶やがてロトの家は町の男たちに取り囲まれた。皆口々に叫んだ。「イケメンの旅人を差し出せよぉ」「2人を独占するなんざ許さねぇ」。ロトは毅然として彼らに言った。「俺には2人の生娘がいる。それを差し出すから旅人は許してくれ」。普通の世界ならダメ提案。しかし聖書は気にしない。外からは「生娘なんか興味ねぇ」「ロト、まずはお前からだ」の声。生娘姉妹ラッキー。興奮した男たちは遂にドアを蹴破って家の中へと雪崩れ込んだ。なんか、良い子たちには聞かせたくないストーリー展開。
▶妻と娘の女子3人完全無視。ロトと天使、男3人が暴徒たちに襲われるというR-18指定的修羅場が目に浮かんだ次の瞬間、辺りが暗転。男たちが皆「アウウゥッ」とうめき、手で目を覆いながらその場に崩れ落ちた。天使たちはロトに向かって叫んだ。「この隙に家族を連れて逃げるがよい。よいか。逃げる際、決して後ろを振り返ってはならぬ。分かったら行け」。ロト一家4人は山に向かって乾燥した大地を駆けた。背後で激しい地鳴りと人々の断末魔の叫びが聞こえ、無数の激しい閃光が夜空を切り裂いた。あまりの恐ろしさに妻がそっと振り返った。そこには硫黄の雨と雷光の中で激しく燃えるソドムの姿があった。次の瞬間、死海の湖水が天に向かって高く吹き上げられ、それが灼熱の塩となって妻の上にドッと降り注いだ。妻はたちまち塩の柱となった。妻、可哀そう。ロト一家を含めても10人の善人すらいなかったため、怒った神によりソドムの町は滅ぼされた。後日、ゴモラという腐敗した町もソドムと同じ運命を辿った。洪水起こしてノアたち以外全員消去したり、神に近づき過ぎたと言ってバベルの塔ぶっ壊したり、この「唯一神」の下す罰は結構無慈悲で激しい。
▶山の洞窟に逃れたロトと娘たち。姉妹は思った。「男が全滅しちゃった。男なしでは子孫が残せない。私たちどうしたらいいの?」。それより塩の柱にされた母さんを嘆こうぜ。その夜、姉妹は父親のロトに酒を飲ませて寝かせ、一人ずつ交代で父と身体を重ねた。そしてそれぞれが男児を出産。それがモアブ人とアンモン人の祖先となった…いや、誰の祖先か知らんけど、やっていることソドムの住民と変わらない気がするぞ。旧約聖書は何を問うているの? どう解釈していいか全く分からないまま次号に続く。チャンネルはそのままだ。
参考:阿刀田高著「旧約聖書を知っていますか」他
週刊ジャーニー No.1319(2023年11月30日)掲載
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