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■ 第89話 ■ギターソロいらない?

▼先日、驚いて鼻から牛乳を噴出しそうになる記事を読んだ。そこには「最近、音楽関係者の間ではイントロとギターソロのある楽曲は売れないと言われている」とあった。どういう意味かと思い読み進むと音楽配信サイトの利用者たちはイントロが長いと「ダルい」、ギターソロが登場すると「テンションが下がる」と言い、曲をスキップしてしまうという。かつてギターソロは最大の見せ場だった。女子に「キャーキャー」言われたくてギターを始めた人も多いだろう。それが昨今「キャーキャー」は「テンション下がる」になっちゃったらしい。どうしたらいいんだ? ギター弾けないけど。

▼全く別の記事だが、ユーチューブなどの動画投稿サイトでも再生速度を1.5倍や2倍に設定して見る人が増えているというものがあった。私も「英国ぶら歩き」という動画を作ってユーチューブに投稿している(宣伝だ)。最近、私の動画に対して「2倍速で見たら音楽が怖かった」というコメントが付いた。2倍速で視聴されることを想定して作っていないので勝手に怖がられても困っちゃう。字幕の一字一句に神経を使い、音楽や映像にあわせて細かく作り込んでいる身として2倍速であらすじだけをサックリすくい取られるのは実に切ない限りだが、それが現実らしい。視聴や閲覧の途中で他の作品にスキップすることを「離脱」という。離脱率が高いとAIは作品を評価しない。評価が低いと広告収益に繋がりづらい。離脱を恐れるあまり、視聴者とAIの顔色を窺いながら本来作りたかったものとかけ離れた作品作りに軌道修正していく人も多い。

ギターソロ
最大の見せ場ですが、何か?

▼ネットニュースの見出しは多くても20字程度に集約しなければならない。Yahooニュースなら15字程度だ。タイトルで惹きつけられなければどんなに有益な記事も読んでもらえない。そのため、投稿者は15~20字内に最大限、読みたくなる内容を詰め込まなければならず、高度な技術が要求される。俳句をやる方ならその大変さが分かるだろう。基本、5・7・5の3句17音に全ての情景を落としこまなければならない。余計な情報を削ぎ落し尽くして残った17音が、時に分厚い本より多くを語ることもある。読まれる確率がタイトルに左右される故、中身とタイトルが一致しない、ほとんど詐欺のようなニュースや動画も横行する。

▼昨年3月末に始まったロックダウンは断続的に約1年半続いた。通勤もなくなり、時間や曜日の感覚すらなくなりそうだった。飲み会も余暇もほぼなくなり、時間的に余裕ができたはずだった。ところが、なぜか気持ちにゆとりがなくなっていくのを感じていた。動画を見ていてもちょっと興味を失うと他の動画を探したり、本を読んでいても集中を欠いたり、何となく何かに追い立てられているようで焦ったりと落ち着きを失っている。焦る事情は特にない。にも拘わらず、ネット上の重厚なニュース記事や、親切丁寧な解説記事でも長過ぎて結論がなかなか見えないと「イラッ」とするようになった。いつの間にか情報に「軽薄短小」を求めるようになっている。そして最近は真偽不明な情報も溢れ返っていてどれが正しくて何が間違っているのかの判断すら怪しくなってきた。情報がないのは困るけど、多過ぎるのもまた厄介。イントロやギターソロを「ダルい」「テンション下がる」と敬遠し、忙しくもないのに動画を早送りで大量に脳内に垂れ流し、タイトルが盛られた怪しげな記事に誘導される。なんだか、変テコな世の中になっちまったもんだとグダグダ憂いつつ次号に続く。チャンネルはとりあえずそのままだぜ。

週刊ジャーニー No.1209(2021年10月7日)掲載

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