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■ 第2話 ■
イギリス料理がまずいだと?-その2-

イギリス料理がうまいかまずいかを論じる前に、下の地図をご覧いただきたい。緯度と縮尺をそのままに、日本列島をヨーロッパまでビヨ~ンと横移動させたものだ。初めて見た時、わが目を疑った。日本最北端の宗谷岬はミラノ、札幌がマルセイユ、東京はクレタ島、大阪はゴーン氏の逃亡先レバノンのベイルート、鹿児島はエジプトのカイロとほぼ同緯度だ。沖縄の石垣島に至ってはもう国名言われてもどこにあるのか分からないくらいアフリカの奥の方だ。

▼このようにヨーロッパはどこも思ったより遥か北に位置する。ではイギリスはどうか。ブリテン島と日本で緯度が重なる所はない。ロンドンですら樺太(サハリン)の真ん中あたり。スコットランド北部のハイランドに至ってはもはや流氷が作られている酷寒ロシアのよく知らないところだ。こんな過酷な所と比べたら網走刑務所なんか、もはや南国パラダイスでウクレレぽろんだ。

▼偏西風が大西洋の暖かく湿った空気を運んでくるためブリテン島は比較的温暖だ。そのため気付きづらいが、イギリスとは緯度だけで言うならば北極圏もそう遠くない超北国だ。夏は夜10時頃まで日が暮れない。なので千鳥足でパブを出るとまだ太陽ギラギラで「お天道様、ごめんなさい」と謝ることになる。それはつまりイギリスがそれだけ北にあることを意味する。

▼私は今、誰に頼まれた訳でもないのにイギリス料理がなぜかくも低評価なのか、世界地図まで持ち出して擁護しようとしている。なぜか。この圧倒的に不利な地理的、気候的条件を考慮せずにイギリス料理をまずいと断罪するのはフェアではないと考えるからだ。

▼ブリテン島は前の氷期、完全に凍結した。つまり全ての動植物が一度消滅した。現在ブリテン島で見られる野生の動植物は氷期が終わり、凍土が溶けて大地が露出したところに鳥が種を運んできたり動物が漂着したり、後に人間が持ち込んだりと、何らかの外的要因で後からもたらされたものだ。その意味ではブリテン島に在来種は存在せず、生きる全ての動植物が外来種と言える。あなたも私もあいつもこいつも外来種。

▼届く太陽光が少なく、寒冷地であるイギリスの土壌が肥沃になるのは難しい。過酷な環境下でも育つのは数種類の根菜類とわずかな葉野菜だ。ブリテン島に辿り着いた生き物はまず、生命維持のために食べ続けなければならなかった。このことを理解しなければイギリス料理の本質は見えて来ない。眉に唾をつけながら次回に続く。

週刊ジャーニー No.1122(2020年1月30日)掲載

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