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No.993 7月20日発行号

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英国に関する特集記事 『サバイバー/Survivor』

2017年6月1日 No.986

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【イングランドの国民的スポーツ】クリケット観戦に行こう!

イングランドの国民的スポーツ

クリケット観戦に行こう!

美しい芝生でプレーが行われ、途中にはティータイムまであり優雅な雰囲気漂う英国発祥のスポーツ、クリケット(cricket)。別名「紳士のスポーツ」とも呼ばれる。その存在に憧れを感じつつも、時には数日間に及ぶなど試合がとにかく長く、「ルールが複雑でよくわからない」…と敬遠してしまいがちなスポーツでもある。そこで、せっかく英国にいるならばクリケット観戦を楽しんでみたい! という人のために、試合を理解するためのヒントと観戦レポートをお届けする。

●サバイバー●取材・執筆・写真/ホートン秋穂・本誌編集部

春~秋は、とにかく試合が目白押し!

どの試合を観る?

春から秋にかけて、英国では週末ともなるとあちらこちらでクリケットに興じる人の姿を目にすることができる。球技としての競技人口はサッカーに次ぐ世界第2位であり、4年に1度のワールドカップでは10万人規模のスタジアムで人々が熱狂し、世界で10億人以上がテレビ観戦するという。イングランド代表戦から国内のカウンティ(州別対抗)リーグ、女子や16歳以下のジュニアリーグ、地元の草野球レベルのチームリーグなど幅広いレベルで試合が行われる。これだけ多岐にわたると、何を見ればよいのか初心者には見当もつかないかもしれない。まずは競技会の種類を抑えておこう。

国際戦

「ジ・アッシューズ」に代表される イングランド・ナショナルチームの試合
ICC(インターナショナル・クリケット・カウンシル)には現在約30ヵ国が加盟し、各種試合が行われている。その中でも、厳しい条件をクリアしたテスト・カントリーと呼ばれる10ヵ国のみで繰り広げられるのが伝統的なテストマッチ(国際試合)。そもそもテストマッチとはイングランド対オーストラリアの定期戦の呼び名だったため、特に時期を区切ったり、10ヵ国間で優勝を決めたりすることはない。2ヵ国間で行われ、各国チームは他の9ヵ国それぞれを相手に、1つずつある「タイトル」を競う。最大5日間かけて催され、クリケットの試合の中では最も伝統と格式がある競技会とされる。
また1975年からは4年に1度ワールドカップが開催されている。テスト・カントリー10ヵ国に加え、予選を通過した国が優勝を競う、1日試合形式のワン・デイ・インターナショナル(以下、ODI/試合形式については、下記参照)の最高峰といえる大会だ。
テストマッチの中でも、「ジ・アッシューズ(The Ashes)」と呼ばれるイングランド対オーストラリアの試合は、最古の歴史と伝統を誇り、最も盛り上がる試合のひとつである。しかし、チケットは入手困難を極める。次戦は今年11月に開幕するが、オーストラリアで開催予定なので生で観戦するのは難しい。そこで今年のおすすめは、イングランド対南アフリカのテストマッチ(7月6日~)、もしくはODI、T20(下記参照)の観戦だ。格上の南アフリカを相手にイングランドがどう戦うか、レベルの高い試合が期待できる。ただし、こちらもチケットは人気なので予約は早めに済ませたい。テストマッチよりはODI、T20の方が取りやすい。
またロンドンには、2大グラウンド「ローズ(Lord’s Cricket Ground)」=タイトル写真=と「ジ・オーヴァル(The Oval)」があり、クリケットの聖地とされるローズよりも、ジ・オーヴァルの方が収容人数も多いのでチケットは取りやすい。だが、由緒ある雰囲気の下で試合を楽しみたいなら断然、ローズを推したい。

テストマッチ・世界ランキング
(男子 2017年5月現在 ICC発表)
1位 インド、2位 南アフリカ、3位 オーストラリア、 4位 イングランド、5位 ニュージーランド、6位 パキスタン、7位 スリランカ、8位 西インド諸島、9位 バングラデシュ、10位 ジンバブエ

クリケットの聖地

ローズの舞台裏ツアーに参加しよう!

200年以上の歴史を誇るローズ・クリケット・グラウンドでは毎日、一般見学ツアー(100分)が催行されている。ピッチを眺める観覧席に加え、MCCのメンバーや選手だけしか入れない瀟洒で優雅な佇まいのクラブハウス、選手の汗の匂いがかすかに感じられるロッカールームにも案内される。建物の歴史に関する説明だけでなく、ユーモアたっぷりに語られるクリケットこぼれ話に耳を傾ける充実の内容だ。
特に圧巻は「ロング・ルーム」と呼ばれる広間=写真右。大きな窓からは目に眩しい緑の芝生のグラウンドが広がり、思わずため息がもれる美しさ。壁にはクリケットにまつわる18世紀~21世紀にかけての絵画が多く飾られ、さながら美術館を訪れるような感覚で楽しめる。MCCは1998年まで女性の入会を認めていなかったので、このロング・ルームに入れる女性はただ一人、英女王だけだったという。
敷地内にはクリケット博物館もあるので、ツアーの開始前に見学するのもおすすめ。ツアーではその中でも特に有名な「ジ・アッシューズ」のコーナーの丁寧な説明が行われる。香水瓶をトロフィーに見立てたとされるテラコッタ製の優勝杯=同左=の実物は10センチほどのサイズで想像以上に小さくてびっくり。オリジナルのトロフィーがこの博物館のガラスケースを出ることはなく、実際に試合で選手が掲げるのは精巧にできたレプリカなのだとか。レプリカは敷地内のショップで販売されているので、お土産におひとついかが?
Lord's Cricket Ground
St John's Wood, London NW8 8QN
ツアー料金: 大人20ポンド 子供(5~15歳)12ポンド
※ツアーは、試合当日・試合準備日など特定日を除いて毎日開催される。
www.lords.org/lords/things-to-do/tours-of-lords/

国内線

気軽かつ本格的なファーストクラス・カウンティ・チームの試合
国際試合の場合、人気の試合になるとチケット代は最低100ポンド以上というものも珍しくない。もっと気軽に懐にも優しく、レベルの高い試合を見たい場合は全18チームからなる国内ファーストクラス・カウンティ・チームの試合がおすすめ。チケット代も席を選ばなければ20ポンド程度とお手頃だ。テストマッチに相当する国内最高峰で4デイマッチのリーグ戦、カウンティ・チャンピオンシップ、もしくは1日試合形式のワンデイ・カップがある(ともに2部制)。
カウンティ・チームでの活躍をもとにイングランド代表選手が選ばれるので、未来のスターをいち早く発掘する気分で観戦するもよし、自分の地元チームを応援するもよし、だ。ちなみにこのカウンティは現在の行政区分ではなく、18世紀にカウンティ対抗で試合が行われた当時の歴史的区分が適用されている。現在のロンドンはミドルセックスとサリーに区分される。ローズはミドルセックスの、ジ・オーヴァルがサリーのホームグラウンドとなっている。また一説によると、注目の一戦はヨークシャーとランカシャーの戦い。15世紀の薔薇戦争にちなみ、その名もローゼズ・マッチ(Roses Match)と呼ばれている。歴史的な因縁がクリケットにも持ち込まれるとは、いかにも英国らしい。

ファーストクラス・カウンティ・チーム(2017年)…[1部] Surrey, Hampshire, Yorkshire, Essex,Lancashire, Middlesex, Somerset, Warwickshire/[2部]Nottinghamshire, Kent, Gloucestershire, Worcestershire, Northamptonshire, Glamorgan, Sussex, Derbyshire, Leicestershire, Durham

草の根レベル

地元密着型マイナー・カウンティ・チームの試合
公式戦扱いにはならない、アマチュアの試合としてマイナー・カウンティの試合がある(現在、20のカウンティが登録中)。たとえば筆者の住むハートフォードシャーのクラブはこのマイナー・カウンティに位置づけられる。ハートフォードシャー内だけで約127のアマチュア・クラブがあり、1つのクラブでもレベルや年齢別に複数のチームが存在する。このアマチュア・クラブ内からハートフォードシャーの代表選手が選ばれ、他のマイナー・カウンティ代表チームと対戦する。
こちらも3日間行われる試合と1日完結型の試合がある。ジュニア・チームの試合にはファーストクラス・カウンティ・チームのスカウトマンも訪れ、将来のスターが発掘されるケースもあるという。例えば現イングランド代表のスティーブン・フィン(下記参照)は、ハートフォードシャー出身の選手。地元の小さなクラブのジュニア・チームでプレーしていたところをミドルセックスにスカウトされ、16歳という史上最年少で公式戦デビューを飾った。
観戦はもちろん無料。観覧席もない簡素なグラウンドが多いせいか、ピクニック・チェアやラグ持参で観戦する人も少なくない。草野球を見る感覚で気軽に観戦できるのがアマチュア・リーグの最大の魅力といえる。

格式重視

名門クラブ MCCの試合ほか

黄色と赤のストライプが特長的なジャケットや帽子は、
MCCのメンバーの証。写真はローズにあるショップ
(購入は会員のみ)。
英国のクリケットを語るときに外せないのがメリルボン・クリケット・クラブ(MCC)の存在。ローズはミドルセックスのホームグラウンドであるのと同時にMCCのホームでもある。MCCは1787年に設立された現存する最古のクラブで1万8000人の会員を有する。会員になるにはウェイティングリストで29年待ちという超名門。MCCが定めたルールは世界中でクリケットの公式競技規則として採択され、今日もクリケット競技の規則を管理・裁定する最も権威ある機関としての役割を果たしている。
ローズを舞台にこのMCCがプレーするクリケットの試合やオックスフォード大対ケンブリッジ大の試合、2大名門パブリックスクールのイートン校対ハーロウ校の試合は古き良き英国の伝統試合をその目で見たいという人におすすめ。

試合形式をチェック!

近年では短時間で決着をつける形式のものが登場。多様化の兆しが見られ、人気を集めている。

テストマッチ/カウンティマッチ

伝統的な国別・カウンティ別対抗戦の試合形式。球数無制限の2イニング制を採用。カウンティマッチは最大4日間、テストマッチは最大5日間で勝敗が決まる
スピード感を例えると?…チェス

ワンデイ・インターナショナル(ODI)

50オーバー(300球)限定1イニング制で行われる国別対抗戦。試合時間はおよそ5~6時間程度となる。ワールドカップもこの形式で行われる
スピード感を例えると?…ゴルフ

トゥエンティ・トゥエンティ(Twenty20)

2003年に登場した短時間で終わる試合形式。20オーバー(120球)限定1イニング制を採用、1試合2時間半程度で終了する スピード感を例えると?
スピード感を例えると?…テニスまたはサッカー

シックス・ア・サイド(6-a-side)

6人制クリケット。5オーバー(30球)限定1イニング制で、1試合50分程度で終了する。公式の試合ではあまり見られないスタイル
スピード感を例えると?…テニスまたはサッカー

ここだけ押さえればおそらく(!?)わかる!

初心者向け 観戦のヒント

イニング  10人アウトで攻守交替

試合は1チーム11人の2チームで行う。先攻チームが10人アウトになると1回表終わり。後攻チームも同じく10人アウトになると1回裏が終了。この「回」を【イニング】という。テストマッチなど正統な試合は1試合2イニングからなる。
守備は投手 【ボウラー】と捕手 【ウィケット・キーパー】以外の9人の野手【フィールダー】であたるが、各ポジションは、戦略に合わせて自由に配置でき、いつでも変更できる。
通常、後攻チームが逆転した時点またはイニングが終了した時点で得点が多いチームが勝利、同じ得点であれば引き分けとなる。ただし、テストマッチやカウンティマッチの場合、一方のチームが得点上でどれだけリードしていても、試合期間中に2イニングを終了させることができなければ、つまりアウトが取れずに試合時間が終了すれば、「引き分け」になってしまう。どこまで得点をリードし、いかに早く相手をアウトにするか、得点で負けていてもどうすれば粘って引き分けに持ち込めるか、時間、天気(雨天で試合が中断し、そのまま試合終了となる場合もある)、選手のコンディションなどを考慮した総合的な頭脳プレーが求められる。これはキャプテンに負うところが大きい。
数日間に及ぶクリケットの試合がチェスの試合に例えられるのはまさにこうした戦術上の駆け引きがあるからといえる。
クリケットのポジション説明

ラン  2人の打者が走って、場所が交替できたら1点

常に2人の打者 【バッツマン】 がピッチに入り攻撃を行う。1人がアウトになると、次の打者と交代する。バッツマンはアウトになるまでグラウンドに立ち続けるが、アウトになると同一イニングで再び打席に立つことはできない。
打撃後やウィケット・キーパーがボールをそらしたときなどに2人のバッツマンがバットを持ってお互いのバッターボックス【クリース】めがけて走る。これを【ラン】と呼び、守備側の返球で【ウィケット】(上図参照)を倒されるよりも早く、2人ともバットか体の一部がクリースを越えるごとに1点 (往復で2点)が入る。どちらかがアウトになると得点にならない。ボールを打っても、返球までに場所を交替するのは間に合わないと判断したら走らなくてもよい。声を掛け合うなど、2人の打者のあうんの呼吸が求められる。
バッツマンはウィケットを倒されなければ、空振りを何回してもアウトにならない。野球のようなファウルゾーンがなく360度どこへでも打撃可能。
また野球にあるデッドボールというものがなく、身体にボールが当たっても「痛いだけ」で試合には何の影響も与えない。ただしバッツマンが足で投球がウィケットに当たるのを防いだとされる場合にアウトにされるレッグ・ビフォー・ウィケット【LBW】というものもある(LBWには細かい条件があり、審判が判断)。

バウンダリー  越えたら4点もしくは6点

クリケット場の中央には両端がバッターボックスになっている長方形の場所【ピッチ】があり、このピッチのまわりで野手【フィールダー】が守備にあたる。それをさらに大きく楕円状に取り囲む形でロープが置いてある。これが【バウンダリー】でバッツマンが打ったボールが地面を転がりながら、あるいはワンバウンド以上で越えた場合、自動的に4点【4ラン】の得点となる。野球のホームランのようにノーバウンドで越えると6点【6ラン】の得点となる。このバウンダリーを越えない場合はバッツマンらが懸命に走って得点を稼ぐことになる。

アウト  フライを捕るか、ウィケットに命中させて倒すか

クリケットのユニークな特徴は、打撃だけが「攻撃」ではない、という点である。ウィケットのベイル(下図参照) が落ちるとアウトになるので、ボウラーはウィケットを狙って投球。バッツマンはアウトをとらせないために、ウィケットを守るためにボールを打ち返す。守備側はとにかく打撃チームのバッツマンを早くアウトにし、得点を少なく抑えなければならない。
以下①~⑤が代表的なアウト。1イニングの攻撃は10人アウトになると終了。
①ボウルド (bowled)
ボウラーの投球でウィケットが直接倒された場合
②コート (caught)
バッツマンの打ったボールがノーバウンドで捕球された場合
③ランアウト (run out)
バッツマンが走っている間にボールがウィケットに戻り(送球により、または捕球したフィールダーがボールを持った手で触れて)、ウィケットが倒された場合
④スタンプト (stumped)
反則投球でない投球に対しポッピング・クリース※(打者線)の外でボールを空振り、または見逃し、そのままランを試みぬまま、ウィケット・キーパーが捕球したボールをグラブごとウィケットにあて、ウィケットが倒された場合に宣告されるアウト。スピンのかかったボールを打ちに前に出てミスショットした際によく見られる。※ポッピング・クリース(下図参照):バッツマンが打撃するときにはこの線をまたがないとアウトになってしまう。ノンストライカーにとっては野球で言うところの塁の役割になり、この線の中にバットか身体の一部を入れていないとアウトになる
⑤LBW (Leg Before Wicket)
バッツマンが足を使って、投球がウィケットに当たるのを防いだとされる場合
クリケットの説明

オーバー  6球投げたらひと区切り

通常、1チームにはボウラーが4人ほどいる(最低2人)。1人のボウラーは必ず、6球続けて投げなければならない。この6球を投げる間に何人アウトにしようと得点が何点入ろうと関係なく6球投げ切る。6球(これを1オーバーと数える)が終わると、別の投手がもう一方のクリース側から投げる。1オーバーごとにウィケット・キーパーは場所を変えることになる(ウィケット・キーパーは各チームに1人のみ)。
また投手によって速球専門【ファスト・ボウラー】、変化球専門【スピナー】とさまざまに異なるので野手たちもキャプテンの指示に従い、守備位置を変える必要がある。さらに1オーバーごとに2人の打者はピッチの中央で短い作戦会議を開くので、全員が位置変えしているような印象を受ける。

試合の流れを知る、観戦レポート

実録!観戦に出掛けた!

では「実際にクリケットの試合を見に行こう」ということで、筆者と編集部Cさんとでローズで行われたカウンティ・チャンピオンシップ、ミドルセックス対エセックスの全4日間の試合の3日目を観戦することになった。しかしこのふたりではクリケットのド素人なので少し心もとないため、幼い頃からクリケットに親しみ、40代後半になっても地元ハートフォードシャーで毎週末クリケットの試合に明け暮れる英国人のN氏に案内役となってもらった。
まず、チケットを買うところからN氏の指南を仰ぐことになった。何日もあるクリケットの試合、何日目を買えばいいのか、どこの席を買えばいいのかがわからない。N氏曰く、個人的には試合の勝敗が決まりそうな2日か3日目がおすすめで、座席も人によって好みがあるけれども一般的にはボウラーの後方にあたる席が人気とのこと。理由は、変化球や速球など投手によって異なるボールの動きが見えるポジションだからということらしい(実際、ボールが速すぎて筆者にはよくわからなかった…。観戦を重ねるうちにきっと見えてくるようになるのだろう)。
試合開始は午前11時だが、10時頃に到着したため、選手が試合前の調整を行う練習グラウンドにまず足を向ける。意外だったのは、選手がウォーミングアップでフットサルを行っていたことだ。練習場の出入り口では選手のサインをもらうために熱心なファンがじっとお目当ての選手が出てくるのを待つ。中には選手名鑑に付箋をいっぱいつけたサインコレクターと思しき年季の入った男性ファンも存在。サインには気軽に応じる選手が多かったのも印象に残った。

ウォーミング・アップ後の選手から
サインをもらう熱心なファンの姿が見られた。
そして午前11時に試合開始。とはいっても、前日からの続きなので試合に出かける前には途中経過を頭に入れておくことが肝要だ。前日までの試合状況がわかるスコアシートは場内にあるスタンドにて1ポンドで販売している。バッツマンの打順や誰が何点得点したかが記されているので手元に持っていると便利。
すでに1日目と2日目で先攻のミドルセックスが1イニング目半ばで507点という大量の得点を達成。戦略的にエセックスにこのイニングで追い抜かれることはないだろうと判断し、7人がアウトを取られた段階で自ら「ディクレア(declare)=これ以上、攻撃の必要なし」をして攻撃を終了したため、エセックスの攻撃が始まり4番目の打者がピッチに立ったところで3日目は幕を開けた。
駆け引きのポイント

ミドルセックスはカウンティ・チームの中でも強豪のチームであるのに対し、エセックスは今年2部リーグから1部リーグに昇格したばかりの格下の相手。N氏によれば、「ミドルセックスは早く相手をアウトにして、2イニング目に持ち込みたいところ。一方、エセックスは得点で追いつくというよりも『アウトを取らせず、時間的に粘って引き分けにもっていきたい』」とのこと。これがこの試合の見どころとなる両者の駆け引きなのだよ、とN氏は説明してくれた。
実際、その言葉を裏付けるようにミドルセックスの野手は「攻め」の守りが目についた。ボウラーが投球すると同時にぐっと打者に近寄り、少しでもボールがチップしてフライになればそれをキャッチするぞ、という勢いで守るのだ。ボウラーや打者の特徴によって守備のフォーメーションは変わるらしく、その指示はキャプテンが声を出して行う。

野球のように頻繁にアウトが取れるわけではないので、
いざアウトが取れると、選手らは大きな声をあげて称え合う。
試合が盛り上がっているのかいないのかは、なかなか打者もアウトにならないし、得点もゆっくりとしか入らないので、正直わかりづらい。時折、ボウラーがウィケットを狙って投球して外れたときやフライをキャッチしそこねたときなどに客席から漏れるため息などによって、「あ、今は見どころだったのだ」ということに気づく。得点を期待して観戦というよりは、いつどんな風にアウトになるかということを人々は待ちわびているような印象をもった。
観覧席に座る人々も日本の野球と違い応援団もおらず、誰がどちらのファンかということはまったくわからない。本や新聞を片手にのんびりピクニック気分で観戦する人が多いのもクリケットの特徴かもしれない。

観客席はリラックスした雰囲気。
上の近未来的な建物はメディア・センター
ランチ休憩は午後1時から40分間で、午後のティータイムは午後3時40分から20分間。場内には軽食やアルコールなどの飲み物が買えるスタンドも複数ある。
筆者らはエセックスが10アウトを取られ、イニングが変わるタイミングでスタジアムを後にしたが、後日のニュースを見たところ、翌最終日は途中で雨天中止となり試合終了。点数だけではミドルセックスの圧勝に見えるが、2イニング目で10アウトを取ってイニングを終了させることができなかったので、結局は引き分けになり、エセックスにはラッキーな結果となった。
N氏の話を聞きながら、戦略が少し見えるようになると、細かいところまでは理解できないものの、頭脳戦としてのクリケットの醍醐味に触れることができ、多くの観客を惹きつける理由がよくわかった。また、好天の下、屋外で気持ちよく風に吹かれながらのクリケット観戦は不思議と心地よい時間となった。

イングランド・クリケット界イケメンをチェック!

Alastair Cook(32)

前イングランド・ナショナルチーム・キャプテン(2012年~2017年2月)、エセックス所属のバッツマン。吸い込まれるような黒い瞳をもち、そのソフトで甘いマスクに女性らが心をときめかせる。
Steven Finn(28)

ミドルセックス所属の速球専門ボウラー。ナショナルチームでも活躍中。2メートルの長身イケメン。爽やかな笑顔と力強い投球に思わず胸キュン。
Stuart Broad(30)

ナショナルチームに所属するボウラー。金髪、青い目のクラシックな美男子。ハリポタ映画のドラコ・マルフォイに似ていることからマルフォイというあだ名で呼ばれることも。
Chris Jordan(28)

バルバドス出身でナショナルチームのオールラウンダーとして活躍。インドのプロリーグにも所属している。引き締まった精悍な黒い肌と真っ白な歯のこぼれんばかりの笑顔にグッとくる女性も多いはず。
James Anderson(34)

ランカシャー所属のボウラー、ナショナルチームにも所属。少年のような茶目っ気のある笑顔と野性的な顔立ちが魅力のハンサム・ボーイ。

 

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無敵艦隊、壊滅への道

超大国スペインと弱小国イングランドの
『激突までの道のり(前編)』 『激突の瞬間(後編)』

写真で旅するロンドン @journey.london


2017年 07月 20日

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