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徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2017年5月18日

何ゆえ、チーズ転がし祭りは 行われますの?


徳川るり子

愛するお父様へ

お父様、お変わりございませんでしょうか? 早速ですが、本日はまたひとつご報告したいことがあり、筆を取りました。

英国には伝統的なイベントが数多くありますが、その中でもスリリングで少々ユニークな祭典として知られるのが「チーズ転がし祭り(Cheese-Rolling at Cooper's Hill)」です。

これはイングランド西部の町、グロスター郊外の小さな村で毎年行われているイベントで、「クーパーズ・ヒル」という急勾配の丘の頂上から転がされる約4キロの丸型チーズを、競技者たちが追いかけて丘を駆け下りるレースです。転がり落ちていくチーズを奪い合う過激なレースですが、実際には斜面の凹凸によって時折飛び跳ねながら、勢いよく転がるチーズに追いつくことは容易ではありません。そのため、丘のふもとに引かれたゴールラインを最初に越えた人がチーズを獲得=「優勝」となります。挑戦者たちは泥まみれになり、また捻挫や骨折といった負傷者も出るとのこと。すぐに病院に搬送できるよう、ゴールラインには救急車も数台待機しているそうです。

このように素朴ながらも危険な「チーズ転がし祭り」には、一体どのような由来があるのでしょう? 気になりましたので、調べてみることにいたしました。

同イベントの事務局に問い合わせましたところ、女性スタッフが丁寧に対応してくださいました。その方によりますと、グロスターの歴史書に「チーズ転がし祭り」の名が初めて登場するのは1826年。少なくとも200年近く続いている祭典ということになりますが、彼女いわく「実際の起源は古代ローマ時代までさかのぼると思っています」とのこと。なぜなら、1826年の時点で「伝統行事」と記されているのだとか。

起源には諸説あるようで、その中でもっとも有力とされている説は2つあります。まずひとつ目は、放牧主が自身の土地の権利を公示するための儀式だったとする説。自らが生産したチーズ(ダブル・グロスターチーズ)を転がして、各土地の境界線を決めたのではないかと考えられているそうです。そしてもうひとつが、豊作を願う儀式だったとする説。新年を無事に迎えられることを祝い、村の代表者が大型のパンやビスケットなどを丘の頂上から転がして神へ供物として捧げ、豊作を祈ったのではないかとおっしゃっていました。どちらにしろ、この村だけで開催されていた極めてローカルなイベントであったことは、ほぼ間違いないとのことでした。

ただ、「チーズ転がし祭り」は現在、5月のスプリング・バンクホリデーに行われていますが、かつてはイエス・キリストの昇天後、聖霊が降りてきた日の翌日とされる「Whit Monday」(聖霊降臨節の月曜日)に開かれていたことから、キリスト教に関連する習慣だという声もあるようです。

今年の「チーズ転がし祭り」は5月29日。この過激で少々変わったイベントを、今年は思い切って見に行ってみようと友人と計画している次第です。

それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成29年5月14日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の26歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英2年8ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

 

 

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