ご当地ワインと郷土料理&名産物⑲スペイン・リオハ その1

2016年11月10日

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物⑲スペイン・リオハ その1

長旅に疲れた巡礼者の友

 

今月号から話題をスペインに移そう。スペインで最も有名なワインと言えばリオハだろう。これは、スペイン語で「川」を意味する「リオrío」+「オハOja」、つまりオハ川周辺のワイン産地で造られるワインを示す(作付け面積は、2013年時点で6.4万ヘクタール)。
リオハでブドウ栽培が始まったのは、フランスのボルドー地方やブルゴーニュ地方より早く、技術がもたらされたのはフェニキア人が隆盛を誇っていた頃と言われている。人口の少ない地区だが、聖ヤコブの遺骸が祭られているサンチャゴ・デ・コンポステラSantiago de Compostelaへの巡礼路上に位置するために、1000年以上もの昔から世界中からの巡礼者をもてなすワイン産地として発展し、そのワインは長旅に疲れた人々を癒してきた。 

リオハ・ワインを生み出すブドウ

リオハでは、年間ワイン生産量は28 ~30億リットル、うち赤ワインが90%を占めている。赤ワインは、主にテンプラニーヨtempranillo種とガルナッチャgarnacha種(フランスではグルナッシュと呼ばれている)、続いてグラシアーノgraciano種、そしてわずかだがマスエロmazuelo種(フランスではカリニャンと呼ばれている)から造られている。テンプラニーヨ種は気候に影響されやすい品種で、中程度の酸味とタンニンを有し、また、果皮が厚めで新鮮なイチゴの香を呈する。一方、ガルナッチャ種は早熟で、タンニンと酸味が低めで糖度が高く、アルコールの高いワインを造る。ともに生産が安定しているため、伝統的にこの2つのブドウ品種が主要品種としてブレンドされることが多い。
ところで、リオハ・ワインのボトルの形には概して2つある。肩の上がったボトルに入ったワインはボルドー・ワイン風でコクがあってフルボディーであるのに対し、なで肩のボトルに入ったワインはブルゴーニュ風で、エレガントかつミディアム・ボディのものが多い。
また、ボトルが細い針金で覆われたワイン=写真=を見かけるが、それは昔、ワイン・ボトルを割れないように藁(わら)で編んだ籠に入れていた名残だ。

 

フランスのワイン商人たちがもたらしたもの

もともとリオハ地区は、カンタンブリア山脈に囲まれた孤立した盆地だった。1700年代にビルバオBilbao港の発展に伴って活性化されたが、良質ワインが造られるようになったのは19世紀半ばのこと。中央政権に反発してフランス・ボルドーに亡命したムリエタ侯爵とリスカル侯爵がボルドーのワイン製法をリオハの地に持ち帰ってきてからになる。さらに、1840年代には、フランスのブドウ栽培地をウドンコ病が襲い、それに続いて1860年代にはフィロキセラ(ブドウ根アブラ虫)によって多くのブドウ畑を失ったボルドーのワイン商人たちが、良質ワインを求めてピレネー山脈を越えてリオハに進出。国内の鉄道の発達も加わってリオハでの良質ワイン生産が大規模に行われるようになった。しかし、結局フィロキセラ災害がスペインにも到来したために、フランス・ワイン商人たちはリオハを去り、フィロキセラから復興したボルドーやラングドック・ルシヨン地方のワイン産地に帰っていったのだった。この後、スペインのワイン生産者達によってフランス的なワイン産業(ブドウ栽培者からのブドウの買い入れ制度や、ワイン醸造法)が受け継がれることになった。
リオハではフィロキセラ対策としてブドウの樹を植え替えるのに10年間を要したものの、スペイン屈指の赤ワイン産地としての地位を確立し、保護原産地呼称制度の最上格付けとしての特選原産地呼称DOCa(リオハとプリオラートの2地区のみ)を獲得するに至っている。リオハ・ワインの特徴は料理とあわせやすいこと。特に地元料理レチャルLechal(ローストした柔らかいラム)やコチニーヨCochinillo(ローストした柔らかいポーク)とは格別の相性だ。そして最後に当地の名産、カメラノ・チーズQueso Camerano(山羊のミルクで作られるチーズ)で締めくくりたい。

 

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。International Wine Challenge審査員。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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