2016年3月10日

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物⑭イタリア・トレンティーノ=アルト・アディジェ州 その1

数奇な運命をたどってきた州

 

今号では、トレンティーノ=アルト・アディジェTrentino-Alto Adige州を取り上げることにしたい。
オーストリアと長い国境を接し、北西でスイスに隣接する同州は、イタリア最北端のワイン産地でもある。南のトレンティーノは常にイタリアに属してきたが、北のアルト・アディジェは第一次世界大戦までオーストリア=ハンガリー帝国の領土だったため、ドイツ語を母語とするドイツ系の住民が多く、道路標識、ワインのラベルなど、すべてドイツ語とイタリア語の併記となっている。

高い輸出率を誇るワイン産地

 

同州の中央を北から南にアディジェ川が流れ、その両側に世界遺産ドロミテ山塊(3000メートルを越す峰々を有する)が連なる。
まずは北側から説明しよう。北部の大部分は山岳地帯で、森林が土地の70%を占め、耕作可能な土地が少ないが、リンゴの産地として知られる。ほとんどのブドウ畑は渓谷の底部近くに広がる標高200~1000メートルの斜面に築かれており標高の高い畑ではリースリングRiesling種、トラミナー・アロマティコTraminer Aromatico種(ゲヴュルツトラミナーGewurztraminer種の同州での呼び名)、ケルナーKerner種、シルヴァナーSilvaner種といったアロマティックなドイツ系白ワイン種が主流。一方、標高が低めの畑ではシャルドネChardonnay種、ソーヴィニョン・ブランSauvignon Blanc種、ピノ・ビアンコPinot Bianco種といったフランス系白ブドウ品種が栽培されている。
赤ワインについては、スキアーヴァSchiava種から、色が薄めで口当たりがソフトな、しばしばハーブの風味を呈す日常用の軽いワインが造られるほか、ラグレインLagrein種から、濃厚な果実味とベルベットのようになめらかな口当たりの重めの赤ワインが生み出されている(このブドウから、ラグレイン・ロサートまたはラグレイン・クレツェルとよばれる、香りの高いロゼも造られる)。スキアーヴァとは「slave(奴隷)」という意味で、原産はスラブ。その品種から造られる最も上質な赤ワインにDOCサンタ・マッダレーナSanta Maddalenaがある。また、19世紀に持ち込まれたメルローMerlot種、ピノ・ノワールPinot Noir種、カベルネ・ソーヴィニョンCabernet Sauvignon種といったフランス品種からも赤ワインが造られている。赤ワインの多くはオーストリアに輸出され、トレンティーノ=アルト・アディジェはワイン生産量に対する輸出率がイタリアでも最も高い州となっている。 加えて、アルト・アディジェはワイン生産量におけるDOCワイン(保護原産地呼称上質ワイン)の割合が多く、ラベルには「DOC Alto Adige」の記述とともにブドウ品種が明記される。

 

人気上昇中のスパークリング・ワイン

 

次に、南側に話を移そう。南に位置するトレンティーノはなだらかな傾斜地。爽やかで、雑味がなく、軽めの上質ピノ・グリージョ種ワインの主要生産地となっている。ここで造られるピノ・グリージョは質が安定しており、値段も手ごろで、いつでも安心して飲むことができる。赤ワインは主にマルツェミーノMarzemino種とテロルデゴTeroldego種から造られ、両方とも、濃いめの色調を有し、タンニンがソフトで、軽めの赤ワインを造っている。また、標高350メートル以上の畑に育つブドウを使って、瓶内二次発酵によるスパークリング・ワイン、DOCトレントTrentoも造られており、人気が高まっている。イタリアで瓶内二次発酵で造られるスパークリング・ワインのうち、最も有名なのは、ロンバルディーア州のDOCGフランチャコルタFranciacortaだが、果実風味豊かなフランチャコルタに対し、トレントはミネラル風味が特徴。
トレンティーノ・アルト・アディジェには素朴な山の料理が多いが、名産物は、 アルト・アディジェのスペックSpeck=写真。これは豚のもも肉を塩漬けしてからスモークし、さらに熟成させた生ハム。まず、秘伝の配合の塩とスパイスをもも肉にまぶして約3週間漬け、20℃以下で燻製にした後、15℃以下、湿度60~90%で、平均22週間熟成させてつくる。塩分は5%以下なので塩辛すぎず、燻製の香ばしさがいきたハムで、ワインのお供として最高だ。

 

 

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。International Wine Challenge審査員。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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