2016年2月11日

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物⑬イタリア・シチリア州 その1

欧州一の活火山がそびえる島

 

 

今号ではイタリアのシチリア島に舞台を移し、イタリア・ワインについての話を続けたい。シチリア島は、イタリア半島の南西に位置する島で、イタリア本土のカラブリア半島とはメッシナ海峡(最狭部の幅は約3キロ)によって隔てられている。面積は 2万5,420平方キロで、日本の九州の約64%、あるいは四国の約1.4倍にあたる大きさ。また、地中海のほぼ中央に位置しており、同島と、南西方向にあるアフリカ大陸・チュニジアとの間のシチリア海峡(幅約145キロ)によって、地中海は東地中海と西地中海に分けられる。
シチリア島はシチリア州最大の島で、中心都市はパレルモ(ちなみに、シチリア州はイタリア最大の面積を持つ州であり、ピエモンテ州がこれに次ぐ)。島の東部にはヨーロッパ最大の活火山エトナ火山(標高3,343メートル)がそびえ、山がち。丘陵地帯が全体の61.4%、山岳地帯が24.5%を占め、平野は14.1%にとどまる。非常に大きな島であることから、全く異なる気候が混在すると同時に、海抜レベルの畑から、標高1,200メートルに達する畑まであり、土壌も真っ白い石灰土壌から鉄分を含んだ赤い火山性土壌までと、きわめて多様。気候が大きく異なるエリアがあるため、収穫も8月から11月半ばと3ヵ月半にも及ぶ。

バラエティ豊かな土着のブドウ品種

 

シチリア島では、紀元前1500年からワイン造りが始められていたと言われ、イタリアでも最も古いワイン産地だ。現在のブドウ栽培総面積は約11万ヘクタールと、フランスのボルドー地方のブドウ栽培面積とほぼ同じ。しかし、ボルドーではワイン生産者数が約8,000であるのに対し、ここではわずか453名しかいない。というのは、ワインを造らない多数の小作ブドウ栽培者が存在し、少数の生産者や協同組合にブドウを売っているからだ。その上、造られるワインのほとんどはバルク・ワイン(瓶詰されず、大型槽に入れられて売られるワイン)で、瓶詰されて売られるワインはわずか総生産量の19%。しかし、1990年代後半からコスCOS、ドンナフガータDonnafugata、プラネータPlanetaそしてベネンティBenantiといった中規模で高品質の商品を目指す意欲的なワイナリーが出現し、土壌や気候そして土着ブドウ品種の個性を表現する偉大なワインが造られるようになってきている。
中でも、評価が高まってきているのがエトナ山周辺の火山灰質土壌の栽培地に育つ土着品種から造られる、エトナ・ロッソEtona Rosso DOC、エトナ・ビアンコEtona Bianco DOC、シシリアSicilia IGTと格付けされたワインたちだ。大量生産用の国際ブドウ品種が多く栽培されているシチリア島だが、ネッロ・ダヴォーラNero D’Avola、ネレッロ・マスカレーゼNerello Mascalese、ネレッロ・マンテッラートNerello Mantellato、ペッリコーネPerricone、フラッパートFrappato、カラブレーゼCalabrese、ネレッロ・カップッチョNerello Cappuccioといった土着の黒ブドウ品種に加え、カタラットCataratto、クレカニコGrecanico、グリッロGrillo、インツォーリアInzolia、ジビッボZibibbo、ダマキーロDamaschino、トレッビアーノTrebbiano、オーソニカAusonica、モスカート・ビアンコMoscato Bianco、カッリカンティCarricante、コリント・ネロCorinto Nero、フィアノFianoといった土着の白ブドウ品種も造られ、その種類の多さに驚く。

 

島で生まれる注目のワイン

 

特に注目されているのは、黒ブドウ品種のネレッロ・マスカレーゼ種とネレッロ・カップッチョ種、白ブドウ品種ではカッリカンティ種。ネレッロ・マスカレーゼの香味は、フランスのブルゴーニュで活躍するピノ・ノワール種とイタリアのバローロを造るネッビオーロ種の中間に、キャンティを造るサンジョヴェーゼ種が加わった感じと表現すればいいだろうか。色調はそれほど濃くないが、香味が複雑で凝縮されたワインを造る。タバコの香を含む、土と花の香を呈し、タンニンが強い。長期熟成させることによって、肉、鳥獣類、堆肥、キノコ、チョコレート、紅茶の出がらしといった官能的なブーケを帯びるようになる。
一方、ネレッロ・カップッチョ種は、フランスのカリニャン種のワインとボルドー・ワインの中間のようなワインを造り、スパイシーでミネラル感があり、熟成するとキノコやなめし皮といった複雑なブーケを呈すようになる。さらに、白ブドウ品種のカッリカンティは、フランスのシュナン・ブラン種とシンプルなシャブリにみられるシャルドネ種の特徴を兼ね合わせている。とてもフレッシュなワインで、その香りには柑橘類やオレンジのゼスト、バター・ナッツと蜂蜜が漂う。
さて、シチリアで紹介したい名物といえばガンベリ・ロッシ・ディ・マッツァーラ・デル・ヴァッロGamberi rossi di mazzara del valloと呼ばれる真っ赤な海老。グリルにしたり蒸したりすることもあるが、ほとんどの場合は生で食べる。大きさがボタンエビほどあるので実に食べごたえがある。500~1,000メートルというかなり深い海に住む海老で、その甘さとジューシーさは特筆に価する。ぜひお試しいただきたい。

 

 

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。International Wine Challenge審査員。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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