2015年11月12日

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物⑪イタリア・ピエモンテ州 その3

イタリアきっての上質ワインの故郷

引き続きピエモンテ州についてお届けしたい。ピエモンテ州はネッビオーロNebbiolo種から造るバローロやバルバレスコに加え、バルベーラBarbera種やドルチェットDolcetto種から造る上質赤ワインの産地として特に有名だが、実はなかなかの辛口白ワインも造っている。まずは、鋭い切れ味と、火打ち石を思わせる硬い酸味のガーヴィGavi。これはコルテーゼCorteseという品種から造られており、通常ハーブやリンゴ、またはグレープフルーツや洋ナシの風味を呈し、神秘的ともいえる濃密さを持つ。これに対して、口当たりの優しいのは、アルネイスArneis種から造られるロエロ・アルネイスRoero ArneisやランゲLanghe。洋ナシやアーモンド、時にはモモといったふくよかで芳醇な風味を持つ。一方、エルバルーチェErbaluce種から造られるエルバルーチェ・ディ・カルーソErbaluce di Calusoは酸味が高くフレッシュで清らかな個性的と評されるワインだ。
また、ピエモンテ州ではシャルドネ種も比較的多く栽培され、シャルドネ・ランゲChardonnay Langhe DOCのように、シャルドネ種が85%以上使用された場合には、産地名とともにその旨が明記されている。なお、以上のワインは、通常はどれも早期消費用に造られており、魚や甲殻類のほか、フォカッチャやサラダによく合う。
ピエモンテ州は、またアスティAstiやモスカート・ダスティMoscato d’Astiといった、モスカート・ブラン・ア・プティ・グランMuscat Blanc à Petits Grains種から造られる甘口発泡性ワインの産地としても知られる。モモやアンズの風味、そしてスイカズラhoneysuckleの芳香を持ち、甘く、すがすがしい口当たりが特長だ。
なお、この州で生産されるワインの80%以上が、DOCG(保証付き原産地統制呼称ワイン)、あるいはDOC(原産地統制呼称ワイン)と名乗ることのできる上質ワインで、イタリア最大の上質ワインの産地となっている。 

豊かな水に恵まれた地

さて、ピエモンテ州の州都トリノにはフィアットの本社もあり、ミラノと並ぶ工業都市として名を馳せているのはご承知の通りだが、この州は、イタリアでは珍しく、アルプスの豊かな雪解け水、多くの河川、水路に恵まれ、古くから農業でも成功してきた。酪農も盛んでミルクが特に美味で、この地方で飲むマッキアートや、デザートのパンナコッタの味わいは格別。さらに、丘陵地帯の谷間ではヘーゼルナッツが広く栽培され、この州の名産となっているだけでなく、独特な絶景を形づくってもいる。また、チョコレートにヘーゼルナッツの濃厚ペーストを混ぜたジャンドゥイオットGianduiotto=写真右=やヌテッラNutella=同下=は多くの人に愛されている。

ナポレオンからの予想外の贈り物

ここで、少々歴史を振り返ってみよう。実は、トリノはイタリアでカカオを最も早くに飲んだり食べたりし始めた地。そもそもチョコレートは、1502年にコロンブスが4度目に航海した時に、中央・南アメリカでカカオの実を発見し、それをスペインに持ち帰ったのが始まり。
当時、カカオを輸入できたのはスペインだけだったのだが、トリノに都を持つサヴォイア公国のエマヌエーレ・フィリベルト公がスペイン国王の将軍でもあったために、1559年にトリノにカカオがもたらされるに至った。しかし、その後、ナポレオン統治下でカカオの量が制限されたことから、不足分を補うためにヘーゼルナッツのペーストを混ぜるようになり、こうしたスイーツやスプレッドが生まれた。ナポレオンから、思わぬ贈り物をもらったようなものといえそうだ。

 

 

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。International Wine Challenge審査員。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
e-mail : 
このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。