2015年5月14日

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物⑩シャンパーニュ地方 その2

気候と闘うブドウ栽培者たち

 

シャンパーニュは森林や丘陵地帯が広がる約3.5万ヘクタールの地域だが、日照を受けることのできる3万ヘクタール弱の斜面で、約2万人の栽培者がブドウを栽培している。シャンパーニュ地方は北緯48~49度とブドウ作りの北限に位置する。ブドウ育成期の平均気温が摂氏16度という冷涼な大陸性気候であるために、ブドウ栽培者にとっては難しい気候といわざるを得ず、ブドウ栽培者は通常、冬の凍結や春の遅霜、その他の厳しい天候と闘わなければならない。最も暖かい年でさえ、ブドウの糖度はきわめて低いままで、酸度が非常に高いことから非発泡性ワインの生産には適していないのも特徴。ほとんどのシャンパーニュは異なった品種からなり、幾つもの異なった畑で育ったブドウが使われる。複数の収穫年のワインをブレンドし、封栓の前に高い酸味とのバランスをとるために糖分が加えられるのは、こうした事情による。シャンパーニュのラベルでよくみられる「NV(non-vintage)」とは複数の収穫年のワインをブレンドしているという意味で、ブリュット「Brut」とは1リットルあたり0~12グラムの甘味が残留しているという意味(ちなみに、ボルドーやブルゴーニュの赤ワインの糖分は通常1リットル中4以下)。

伝統を誇る 24のシャンパーニュ生産者

先述のとおり、シャンパーニュを造るには幾つもの異なった生産地から取り寄せた、異なった収獲年のワインを長年保管する必要があり、また生産工程が複雑であるために、その設備への投資も大きい。そこで、ほとんどのブドウ栽培者は大手生産者にブドウを売ることになる。例えば、シャンパーニュの最大手、モエ・エ・シャンドンMoët & Chandon(「モエ・テ・シャンドン」と発音する場合もある)は、約150もの異なった地区、異なった村、異なった畑、異なった収獲年のワインをブレンドしてNVシャンパーニュを造っている。このように、ブドウを買い入れて(自社畑を多少持つところもあるが)、シャンパーニュを造る生産者をネゴシャン・マニュピュラン(NM: négociant manipulant)と呼んでいる。
数百ある大手生産者の中でも特に伝統的に有名なものは、グランド・マルクGrande Marqueといって24ブランドが選ばれている。アルファベット順にご紹介しておこう。アヤラAyala ビルカール=サルモンBillecart-Salmon ボランジェBollinger カナール=デュシェンヌCanard-Duchêne ドゥーツ Deutz ゴゼGosset シャルル・エドシックCharles Heidsieck エドシック・モノポールHeidsieck & Co Monopole クリュッグKrug ランソンLanson ローラン=ペリエLaurent-Perrier メルシエMercier モエ・エ・シャンドンMoët & Chandon マム Mumm ジョゼフ・ペリエJoseph Perrier ペリエ=ジュエPerrier-Jouët ピペール=エドシックPiper-Heidsieck ポル・ロジェPol Roger ポムリPommery ルイ・ロドレールLouis RoedererルイナールRuinart サロンSalon テタンジェTaittinger ヴーヴ・クリコVeuve Clicquot

小規模生産者の台頭


© Spedona

© Paul Munhoven

ここ20年ほど、小さなブドウ栽培者が所有する畑で造ったブドウを使い、独自で自社名のシャンパーニュを造って販売するケースが見られるようになり、人気が高まってきている。このような生産者をレコルタン・マニュピュラン(RM: récoltant manipulant)と呼んでいる(上限5%までは他から買い入れることが許されている)。これらのシャンパーニュ・ラベルにはRMと記されている。数多くの種類のワインをブレンドして造られるわけではなく、小規模な地区で育てられた、通常、単一収獲年のブドウから造られるので、収穫年も明記される。RMシャンパーニュの方が丁寧に造られ、より風土の味を感じさせるアルティザン(職人)のシャンパーニュと評価する人もいるが、好みによるだろう。こうした生産者の中には、ジャック・セロスJacques Selosse(ビオディナミ農法)、エグリ=ウーリエEgly-Ouriet(ロンドン・サヴォイ・ホテルのハウス・シャンパーニュでもある)、ピエール・ペーターPierre Péters(シャルドネの極意とまで評される)などが含まれる。
さて、シャンパーニュ産チーズと言えば、シャウルスChaource=写真左。仏語で猫を意味する「シャ」と熊を意味する「ウルス」が語源のシャウルスの町で中世の時代から造られてきたチーズで、2匹の猫と1匹の熊がマーク=同右=となっている。口の中でクリームのように溶け、デリケートな酸味がシャンパーニュとぴったり。一年中食べられるが、特に夏から秋にかけてが旬で、初秋のものならキノコの香りも楽しめる。

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。International Wine Challenge審査員。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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