2015年1月15日

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物⑦ブルターニュ その1

冬の貝の王様は「海のミルク」

ホタテ貝、赤貝、マテ貝、ハマグリ、ムラサキ貝…と、冬が旬である貝類が出回る季節。今回は少々趣向を変えて、こうした貝類の中でも「王様」に位置づけられるカキ(oyster)についてお届けすることにしたい。
カキはミネラル、タンパク質、アミノ酸、グリコーゲンなどを含む栄養価が高い食べ物とされ、「海のミルク」の異名を持っていることはご承知の通りだろう。カキの種は着床してからほとんど動かないため、筋肉が退化する。私たちが食す部分は、カキの体のほとんどを占める内臓。生食のほか、鍋料理に入れたり、あるいは網焼きや酢の物にしたり、また、フライにして味わったりと、調理法もバラエティに富む。

カキ産業の救世主となった日本

日本では縄文時代からカキを食用としてきているものの、養殖に関してはヨーロッパ(紀元前1世紀頃から養殖を開始)よりかなり遅く、養殖が始まったのは1688年からとされている。しかし、歴史は浅くとも、日本は世界のカキ産業に多大な貢献を果たした経緯がある。というのも、1966~69年、そして1970~73年と2度にわたってフランスではカキが病原性微生物に侵され、深刻な打撃を受けた。その危機を救ったのが、日本のマガキだった。マガキ=写真=は病原性微生物に対して抵抗性があることが判明、フランスのカキ養殖業の復興を助けただけでなく、世界中で養殖されるようになった。ちなみに、現在フランスで生産されるカキの90%以上は日本原産のマガキの子孫となっている。

 

フランス牡蠣の誇り

フランスでは、北はブルターニュのカンカルCancal周辺(モン・サンミッシェルから西に車で40~50分)から、南はボルドーのアルカション湾に至る大西洋沿岸地域がカキの一大産地。市場で購入できるのは主に2種で、1つは丸いタイプのカキ(仏:huitre plate、英:フラット・オイスターflat oyster)で、レストランなどではブロン、あるいはベロンBelonと呼ばれているもの。この種はヨーロッパ原産で、現在の生産量は全体の2%とごく少ないとはいえ、甘味のある濃い味わいが特徴。「フランス牡蠣」の誇りとなっている。もうひとつは、クルーズCreuseと呼ばれる種で、アルカション(ボルドー地方)が主な産地。日本のマガキ導入により生産されるようになったカキで、フランスでの生産量全体の97%超を占める。味わいは、新鮮な青野菜や柑橘類のデリケートな風味のものから、濃いミルクを思わせるこってりした味わいのものまで産地によって様々だ。

生ガキと相性抜群の白ワイン


「フランス牡蠣」の誇り、ブロン
© Myrabella
世界遺産のひとつ、モン・サンミッシェルを訪れた際、「フランス牡蠣」の誇り、ブロンを産するカンカル村に寄ってみてはいかがだろう。前述のとおり、車で西に40~50分ほど走ったところにあるカンカルでは、海岸沿いに20~30軒ものカキ・バー/レストランが立ち並ぶ。
注文する際、サイズを指定することになっている。サイズは0~5まであり、0が一番大きいのだが(0…150+グラム、1…111~150グラム、2…86~110グラム、3…66~85グラム、4…46~65グラム、5…30~45グラム)3番か4番あたりが定番。レモンを絞ったり、ワイン・ビネガーにエシャロットのみじん切り入りソースをかけたりして食すのが一般的。その際、選びたいワインは、カキ大生産地の内陸に位置するロワール川流域で造られる辛口白ワイン、ミュスカデMuscadet。このワインには、ミュスカデMuscadet、ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌMuscadet Se`vre et Maine AC、そして死んだ酵母を瓶詰時までワインと接触させて造るミュスカデ・シュル・リMuscadet sur Lieやミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ・シュル・リMuscadet Se`vre et Maine sur Lieがあるが、どれもアルコールは12度以下。新鮮な酸味とデリケートな味わいで、生ガキと最高の相性だ。旬のカキとともに心ゆくまで楽しんでいただきたい。

 

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。International Wine Challenge審査員。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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