2014年12月11日

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物⑥ボルドー

ナポレオン3世の野心

ボルドー・ワインというと、シャトー・マルゴー、シャトー・ラトゥールといった格付けワインで名高い。1級から5級まで61シャトーが格付けされているために買い手にとってわかりやすく、高値であってもその知名度や信頼性の高さから、ワイン・オークションには必ず登場するスターたちだ。このように格付けされているワイン産地は世界でもボルドーだけなのだが、実はこの格付けには法的な意味は全くない。これは『歴史的な格付け』と呼ばれ、1855年に格付けされてから現在までほとんどの格付けに変更がない。そもそもの起こりとは、ワインが主に生産国だけで消費されていた当時、ナポレオン3世=写真左下=がパリ万博を機に、ボルドー・ワインを目玉商品にして世界に輸出したいという野心から格付けを命じ、万博でボルドーの格付けワインのお披露目を切望したことに始まる。この命を受け、結局ボルドー商工会議所が中心となって、ボルドーのワイン商に当時のメドック(赤ワイン)とソーテルヌ(甘口ワイン)のワインの中で流通価格の高いものから格付した。ただ、現在のボルドー地方とは、ガロンヌ川、ドルドーニュ川、その両川の間、そして両川が合流したジロンド川の周辺を指すが、その頃は、ガロンヌ川沿いに位置するボルドー市のワイン商はガロンヌ川とジロンド川周辺地域のワインを扱っていたために、今ではボルドー・ワインに含まれるサンテ=ミリヨンやポムロールのワインは無視される結果となった。

意地悪をされた高級ワイン

さて、この格付けは1855年以来今日まで、ほとんどの変更なく受け継がれていると前述したが、例外中の例外は、1973年に2級格付けから1級格付けとなったシャトー・ムートン・ロッチルドChateaux Mouton Rothschild(これは仏語。ドイツ語読みでロートシルト、英語読みでロスチャイルド)である。1855年、このシャトーのオーナーはネイサン・マイヤー・ロスチャイルドという英国籍の銀行家だった。彼の父親、マイアー・アムシェル・ロートシルト Mayer Amschel Rothschild(1744~1812年)は、フランクフルトで古銭商人としてスタートしたドイツの銀行家で、5人の息子のうち、長男をフランクフルトに、次男をウィーンに、三男のネイサンをロンドンに、四男をナポリに、そして五男のジェームズをパリにと、ヨーロッパの要所に送ることにより、更に巨大な富を築き上げ、ヨーロッパ財閥ロートシルト家を築いた人物として有名だ。この三男のネイサンは、ウォータールーの戦い(1815年)に際して起こった公債の暴落と暴騰によって大儲けし、結局シャトー・ムートンを1853年に買った。だが、1855年の歴史的格付けで、シャトー・ムートンは2級に格付けされてしまう。シャトー・ムートンは高額で売買されていたにもかかわらず、オーナーが英国籍ということ、また彼に対するボルドーからの反発のために2級に格付けされたという逸話はどうも本当らしい。その後、現オーナーの父親、バロン・フィリップの政治的貢献によって1級に変更された。ちなみに、五男のジェームズは1868年に、同じく1級のシャトー・ラフィットChateau Lafit Rothschildを買収している。つまり、ボルドー1級シャトーには2つのロッチルドが存在するのだ。

高級肉牛との華麗なるコンビネーション


© CyrilleBERNIZET
さて、ボルドー1級格付けワインは、ヴィンテージ(収獲年)にもよるが、よいヴィンテージだと少なくとも15年は寝かせて飲まないと、その醍醐味がわからないと言われている。このような古酒に合う料理というと、やはり高級ビーフだろう。実は、ボルドーは、日本の神戸牛に匹敵するほどの高級牛の産地でもある。肉牛の名は「バザデーズBazadaise」=同下。ボルドーから60キロほど南下したところにあるバザスBazasと、スペインとの国境にそびえるピレネー山脈でしか飼育されておらず、その希少価値から値が高い。この牛はもともとボルドーのブドウ畑の作業用として用いられていたのだが、その肉質の良さから食用として飼育されるようになった。ボルドー赤ワインにボーン・マロー(bone marrow=骨髄)、溶かしバタ-、エシャロット、ハーブを加えて作ったソースを添えた、霜降りのソフトな肩ロースのグリルentreco^te a` la bordelaiseで、今年を豪華に締めくくってみてはいかがだろう。

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。International Wine Challenge審査員。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
e-mail : 
このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。