2014年11月13日

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物⑤南西部

実力を秘めた『田舎者』のワイン

世ボルドー地方のサンテ=ミリヨン地区Saint-E'milion とアントル・ドゥ・メール地区Entre-Deux-Mersの間を流れるドルドーニュー川を東に沿って上ると南西部地方のベルジュラック地域Bergeracと呼ばれるワイン産地がある。このあたりのワインは長い間、洗練されたボルドー・ワインの傍らで『田舎者のワイン』のように見られてきた。しかしながら、ベルジュラック地域はボルドー地方と地繋がりで、栽培されるブドウ品種もほぼ同じ。赤ワイン用にはカベルネ・ソーヴィニョンCabernet Sauvignon種、カベルネ・フランCabernet Franc種、そしてメルロMerlot種、辛口白ワインにはセミヨンSe'millon種、ソーヴィニョン・ブランSauvignon Blanc種、そして甘口白ワインにはセミヨン種、ソーヴィニョン・ブラン種、ミュスカデルMuscadelle種が使われている。造られるワインはボルドーのベーシックなワインに似ており、赤ワインの場合、色が濃く、酸味とタンニン、黒い果実香味に富む。白ワインの場合は、緑味を帯びた淡いレモン色、草木やスグリを思わせる酸味の高い、さわやかな口当たりの早期消費用のワインとなり、甘口ワインの場合、貴腐の香り、そしてハチミツやマーマレード、キンポウゲの花の風味を持つ。

冷製フォアグラに欠かせないパートナー


贅沢にフォアグラとトリュフをあわせた、「牛ヒレ肉のロッシーニ風」© kennejima
この地域にはさらに小規模のワイン産地がいくつかあり、フランス国内でさえ知名度の低い産地もあるものの、近年では、熱心な生産者から非常に優れたワインも生まれてきており、中には世界的に高い評価を得るようになった産地もある。辛口赤ワインで評価されているワインにはベルジュラックBergerac AC(AC:原産地統制呼称ワイン「アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレAppellation d’Origine Contro^le'e」の略)、ペシャルマンPe'charmant AC、辛口白ワインにはモンラヴェルMontravel ACベルジュラックACそして甘口デザート・ワイン(貴腐ワイン)にはモンバジャックMonbazillac AC、ソシニャックSaussignac AC、そしてロゼットRosette ACがある。この地域で造られる貴腐ワインは、ボルドーのソーテルヌ ACやバルサック ACより甘味が少なく軽いため、フランス人の間で愛好者が多い。それもそのはず、実は、この地方には世界三大珍味(キャビア、トリュフ、フォアグラ)のうちの2つの珍味(トリュフ、フォアグラ)を生産するペリゴール地方Pe'rigordがあり、この地域で造られる軽めの貴腐ワインは、冷製のフォアグラには欠かせない

秋といえば恋しくなる高級食材


贅沢にフォアグラとトリュフをあわせた、「牛ヒレ肉のロッシーニ風」© kennejima
飼育法が残酷だという理由により、賛否が大きく分かれるフォアグラfoie grasながら、一説には古代ローマ人がガチョウに干しイチジクを与えて飼育し、その肝臓を食べたのが始まりだと言われている。ということは、2000年近くも続いている伝統食品というわけだ。
世界のフォアグラ生産量は2000年で約1.8万トンだが、そのうちフランス産は約1.5万トン。フランス国内でもペリゴール地方を含む南西部でフランス産の75%を占め、ガチョウと鴨の両方のフォアグラを生産している。しかし近年では、バイオ燃料の普及でエサとなるトウモロコシなどの穀物が高騰し、生産コストがかつての10倍以上に上昇し廃業する農家がでているという。
さて、反対派の批判も理解できるとはいえ、軽く炙った薄切りのフォアグラを載せた牛ヒレと古いボルドー・ワインや、上質のペシャルマンやベルジュラックの辛口赤ワインの組み合わせは絶妙だ。
また、既述の通り、このペリゴール地方は世界三大珍味のうち、トリュフtruffeの生産でも有名だ。市場に出回るトリュフには10種類ほどあるそうだが、ここでとれるトリュフはペリゴール・トリュフと呼ばれる高級食材で「黒いダイヤ」=写真=とも呼ばれている。
松茸が赤松の木の根元に生えるように、トリュフはカシの木などの根元に根付いた胞子が木から栄養分を得て成長する。ところが、松茸と違って、トリュフは途中まで成長すると共生してきた木から独立して更に大きくなり成熟する。トリュフは薄く削って、かけてよし、混ぜてよし、肉によし、パスタによし、サラダによし、卵によし…と料理法の幅が広い。フォアグラにしても、トリュフにしても、秋も深まってくると、特に恋しくなる贅沢な味と言わずにはいられない。

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。International Wine Challenge審査員。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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