2013年9月12

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物①ブルゴーニュ その9

 

森ごとに個性の異なるオークの木

引き続きブルゴーニュ・ワインについてお届けしたい。最近では、ワイン醸造にステンレス製タンクが使用されることが当たり前になったが、ブルゴーニュ地方では昔ながらの大小のオーク樽を用いているところがまだ多い。それもそのはず、ブルゴーニュ地方のヴォージュVosges、ヌヴェールNevers、トロンセTronçis、リムザンLimousin、アリエAllierといった地域にはオークの森が広がり、ワイン産地付近には樽工場が少なくないのだ。オークは木質が硬いために昔から貯蔵容器として、あるいは建築用として使われてきた。また、土壌や気候、標高の違いから、オーク材にも地域ごとの個性があり、例えば、リムザンの森は粘土質である部分が多いためタンニンが強いのに対し、ヴォージュ、ヌヴェール、トロンセ、アリエ産のものはタンニンが抑えられエレガント、という具合だ(もちろん、同じ森の中でも標高や地勢によって違いが生じる)。

ワインの複雑な香味づけに大活躍

オークの小型新樽は通常10万円ほどし、以前は、オーク樽を使って醸造されたワインは白でも赤でも値段が高かった。それが1980年代にオーストラリアからオーク風味の強い安価なシャルドネが紹介されると、英国などでは当時、大人気となった。安価の秘密は、オークチップ(オーク材の小さな切片)やオークの樽板をステンレス製タンクの中に入れることによってオークの風味をワインにつけるという醸造方法にあり、今ではこの技術は世界中で広く適用されている。
しかし、ブルゴーニュは別格で、高級ワインには必ずオークの新樽が使われている。オーク材は通常、数年間、雨風に当たる外に置かれ、タンニンや強い風味を除いてから、樽板が作られる。樽は、形が異なる幾つもの樽板を組み合わせて造られるのだが、フランスでは樽の内側を火で熱しながら曲げ、樽の形を整える。その際、樽の内側が焦げる。ワイン生産者はその焦がし加減を樽の生産者に指定し、独自の風味作りに励む。高級ワインの生産者ともなると、異なる森の樽屋、または同じ森の異なる樽屋が提供する、異なる焦がし加減の多様な樽を使用することによって、造られるワインの風味に複雑さが増すように工夫している。といっても、オーク風味がワイン香味を圧倒することは決してなく、ワイン自体の香味の凝縮感や複雑感をサポートする程度に抑えられているのがブルゴーニュ高級ワインの特徴。一般的に、オーク風味のあるワインといえば、ワインが若いうちは煙、トースト、バニラ、木製家具用つや出し剤といった風味を呈すが、ワインが長期熟成すると酸化や還元によって、コーヒー、トフィー、カラメル、チョコレートといったブーケを呈すようになる。

熟成ワインと楽しみたいブルゴーニュのチーズたち

 
熟成したワインに欠かせないのがチーズだが、かつてのブルゴーニュ公国の首都、ディジョンDijonから西のフランシュ・コンテFranche-Comté地方はチーズの名産地。その代表的なものにモン・ドールMont d'Or(仏語で「金の山」という意味)=写真左上=とコンテComté=同右がある。どちらも牛乳から作られるがモン・ドールはソフトで、コンテはセミ・ハード・チーズ。モン・ドールはエピセア(モミの一種)の樹皮を巻いて熟成され、丸い木箱に入れられて出荷されるために、木の香りがチーズにしみこんでいる。古いブルゴーニュ白ワインと一緒に楽しみたいチーズだ。このチーズは季節限定で、英国で買えるのは今の季節から2月までのみ。外皮がオレンジ色になり、カビが生え、中がトロトロの状態になったものがおいしい。スプーンですくって食べ(外皮は食べても害ではないが、外した方が無難)、木箱内に残ったら、白ワインを少量加えてオーブンで温めて、バゲットなどのパンを浸して、チーズ・フォンデュのようにして食べても美味。一方、コンテはミルク風味の芳醇なチーズで、特に熟成したブルゴーニュの赤ワインとは抜群の相性だ。

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。International Wine Challenge審査員。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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