2013年7月11

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物①ブルゴーニュ その7

 

ワインに徹した街

「ブルゴーニュのコート・ドール(黄金の斜面)を訪ねるのですが…」と、助言を求められた時、宿泊地についてはいつもボーヌBeauneの町をお薦めしている。というのは、ボーヌの町はコート・ドールの中心に位置し、北のコート・ドゥ・ニュイにある有名な赤ワイン産地を巡るにも、南のコート・ドゥ・ボーヌにある偉大な白ワイン産地に出かけるにも非常に都合がよいだけでなく、多くのワイン商(ネゴシャン)が本拠を置いているからだ。ワインはもちろんワイン・グッズの店も揃うなど、ワインに徹した町といえるのに加え、美味しいレストランも多く、週末は大きなマーケットでにぎわう。
ここは、1辺が約1キロの正方形の古い町。四方が堀と要塞で囲まれ、その要塞の各隅にある、どっしりとした背の高い展望楼は、ボーヌに本拠を置くネゴシャンのワイン・セラーとして使われている。この町の東側の門をくぐるとオスピス・ドゥ・ボーヌHospices de Beaune(別名オテル・デューHotel-Dieu)がある。これは、1443年にブルゴーニュ公国の宰相ニコラ・ロランが、貧しい人たちを救済するために設立した慈善施療院。貧困のために生活できなくなった老人、とりわけ病人を収容・治療するために作られた施設で、当時としては最上の医療設備が整っていた。

慈善事業のために始まった『栄光の3日間』

1851年から毎年11月に行われているレ・トロワ・グロリューズLes Trois Glorieuses(『栄光の3日間』の意)では、クリスティーズChristiesが主催するチャリティ・ワイン・オークションのために、世界中からネゴシャンやワイン収集家がここに集まる。出品されるのは、長年に渡ってオスピス・ドゥ・ボーヌに寄付された計61ヘクタールのブドウ畑で造られたワインだ。例えば、白ワインならムルソーMeursault、コルトン・シャルルマーニュCorton Charlemagne、バタール・モンラッシェBatard Montrachetなど、赤ワインならボーヌBeaune、ポマールPommard、ヴォルネイVolnay、コルトンCorton、クロ・ド・ラ・ロッシュClos de La Roche、マジ・シャンベルタンMazis-Chambertinなどで、ほとんどがプルミエ・クリュ(1級畑)かグラン・クリュ(特級畑)。オスピス・ドゥ・ボーヌのワインは、他に流通されることなく毎年すべてこの競売にかけられ、得られる収益は、現在もオスピス・ドゥ・ボーヌで行われている慈善事業や医療機器の購入・改善などのために活用されている。
また、この競売での落札価格がその年のブルゴーニュ・ワインの相場を決めるとされ、大変重要な意味も備えている。
ところで、通常、格付畑で造られたブルゴーニュのワインは、畑の名前がラベルに書かれる。つまり、ある人が3つの格付畑を所有しているとすると、3つの異なったワインが造られるのだが、オスピス・ドゥ・ボーヌのワインの場合には、ある人が3つの畑を寄付すると、その3つの畑のワインをブレンドし、1つのワインとして樽入りで競売にかけられる。ラベルには畑名ではなく寄進者(Cuveeキュベ)の名前が明記される決まり。さらに、落札された樽は、落札者が委託したネゴシャンによって18~20ヵ月間、樽熟成が行われる。出荷時には落札者の名前などをラベルに記載することができるので、非常に独自性、希少価値のあるワインとなる。

煮込み料理にまつわる美味しいルール

 

ブルゴーニュならではの料理に、「ブッフ・ブルギニョンboeuf Bourguignon」(ブルゴーニュ風牛肉のワイン煮込み)=写真右上、「コッコ・ヴァンcoq au vin」(雄鶏の赤ワイン煮込み)=同右下=がある。どちらも寒い冬には欠かせない人気の料理だ。2品とも肉や野菜に赤ワインを加えて煮込んで作るわけだが、この際、煮込み用には必ずブルゴーニュの赤ワインを使うのが伝統。さらに、料理に使われたのと同じブドウ品種から造ったワインを料理と一緒に飲むのが、より美味しく楽しむためのルールとなっている(つまり、ボージョレ・ワインを煮込み用に使ったらボージョレを飲み、ピノ・ノワールを使って煮込んだらブルゴーニュの村名称ワインなどを飲むという具合。煮込み用にイタリアなどのワインを使い、食す時に全く別のワインを飲むようなことはしない)。
 

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。International Wine Challenge審査員。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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