徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2016年8月25日

何ゆえ、英国の新学期は9月に始まりますの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

お父様、お変わりございませんでしょうか?

17日間にわたって行われていたリオ五輪が、ついに閉幕いたしましたね。わたくしも日本選手のみなさまの戦いぶりを、テレビ観戦ではございますが、ずっと拝見しておりましたので、「スポーツの祭典」が終わってしまったことに寂しさを感じます。4年後に開催される東京五輪が、本当に楽しみでなりません。今週からはパラリンピックが開幕いたしますので、そちらもできる限り応援したいと思っている次第です。

さて、本日も日本と英国の違いをまたひとつ発見いたしましたので、その事柄についてご報告したく筆をとりました。

日本とは異なり、英国では9月に新学期がスタートいたします。わたくしも新学期の開始にあわせて英国に参りましたが、桜が満開になる4月に新生活も始まるという習慣に馴染んでおりましただけに、渡英時は何とも奇妙な心持ちになったことを強く覚えております。それにしましても、一体なぜ英国では9月に新学期がスタートするのでしょう? いつもの好奇心が頭をもたげてまいりましたので、調べてみることにいたしました。

いくつか資料をあたりましたところ、「9月が新学期」という制度は、19世紀のヴィクトリア朝時代に確立されたとのこと。当時は、多くの学校が農業の年間予定にそって開校期間を決めていたそうで、子どもたちは午前9時~午後3時半まで学校に通い(現在とあまり変わらないのですね)、放課後は家の仕事を手伝っていたのだとか。とくに農家は夏季がもっとも忙しく、家族総出で収穫を行なわなければならず、子どもたちも学校に通う時間がなかったようです。そのため、学校側は農繁期の7月下旬~8月末を長期の休校期間とし、農閑期に入って生徒の足並みがそろう9月を「新学期」にしたとのことでした。

現在の英国では、地域や学校によって多少異なるものの、一般的に9月の第1月曜が始業日とされています。日本と同様に3学期制を導入しており、9~12月を「Autumn Term(秋期)」、1~4月を「Spring Term(春期)」、4~7月を「Summer Term(夏期)」と呼び、各学期の中間ごろに「Half Term(ハーフターム)」という5日間の休みが入ります。このほか、クリスマス・ホリデーやイースター・ホリデーなどが加わりますので、どうやら日本よりも休日が多いことがわかりました。

ちなみに、日本も明治維新以降、英国など欧米の影響を受けて、新学期を9月としていた時期があったようです。しかしながら、日本の経済力や軍事力を上げるために実施された様々な政策にともない、やがて4月を新学期とする制度が定着したということでした。

わたくしが通う英語学校の始業日も、9月5日(月)です。新学期のスタートにあわせて心機一転、見聞をさらに広めるよう努め、英語の習得にもますます励みたいと思っております。

それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成28年8月22日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年11ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。