徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2016年8月18日

何ゆえ、ロンドンの路上の大道芸は違法ではありませんの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

お父様、お変わりございませんでしょうか? 早速ですが今日は、ロンドンで毎日のように見かける大道芸人について、ご報告いたします。

先日、友人とわたくしの大好きなミュージカル「オペラ座の怪人」を久しぶりに観に行くことになり、ピカデリー・サーカスで待ち合わせをしたときのことです。信号故障で地下鉄の到着が遅れに遅れ、30分ほども彼女を待つことになってしまいました(観劇前に軽く食事をしようと、早めに会う約束をしておりましたので、舞台は予定通りに観ることができました)。

近くのカフェはどこも混み合っておりましたので、「エロス像」の前で大道芸人が行っているパフォーマンスを眺めながら、彼女を待つことにしたのですが、これが大変な大盛り上がりで驚きました。20代のミュージシャンの卵という男性によるライブ・パフォーマンスだったのですが、どうやらあちこちで演奏なさっているらしく、固定のファン(?)がいるようでした。

それにしましても、ピカデリー・サーカスに限らず、ロンドンでは「バスキングbusking」(大道芸や楽器演奏など、路上で行われるパフォーマンスのことです)を行っている人々を、毎日必ずどこかで見かけます。地下鉄の駅はもちろんのこと、トラファルガー広場にあるナショナル・ギャラリー前には、空中に浮かんでいるように見える映画「スター・ウォーズ」シリーズのヨーダや死神、少々怪しげなミッキーマウスたちが、ずらりと並んでいます。正直なところ、あまり「レベルが高い」と思えない方々もいらっしゃいますが、こうした路上でのバスキングは法律で許されているのでしょうか? また、誰でも行ってよいものなのでしょうか? ふと興味がわき、調べてみることにいたしました。

ロンドンでのバスキング活動を管理・支援するため、ロンドン市長が昨年設立したという団体「Busk in London」に問い合わせますと、広報の女性が丁寧に対応してくださいました。

その方のお話では、以前はバスキングを行うのに資格や許可は必要なく、政府も黙認していたとのこと。しかし、大道芸人同士が場所の取り合いで揉め事を起こしたり、交通や営業の妨げになる場所でのパフォーマンスに警官が出動したりとトラブルが頻発したため、2003年からライセンス制になったのだとか。オーディションを受けて合格した許可証保持者だけが、路上や地下鉄駅でのバスキングを許されているそうです。

また、バスキングができる時間と場所も決められており、「Busk in London」のウェブサイトで確認できるとのこと。「エロス像」前での演奏などは競争が激しく、事前に予約しなければならない上に、演奏時間は30分という規定があるそうです。ちなみに、わずかなスペースで静かに行えるバスキング(たとえばヨーダに扮する大道芸などです)の場合は、場所取りは「早い者勝ち」のようです。

路上での大道芸は、ロンドンの文化(?)の一部と言ってよいかもしれませんね。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成28年8月15日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年11ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。