徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2016年7月8日

何ゆえ、「ブルーバッジ」ガイドと呼ばれますの?


徳川るり子

愛するお父様へ

お父様、お変わりございませんでしょうか? 本日も、英国について新たに知り得ました事柄をご報告いたします。

先週、友人のソフィー嬢と一緒にウォーキングツアーに参加いたしました。夜7時半にセント・ポール駅に集合し、シティ周辺の幽霊が出るという噂のある「いわくつきの場所」を、2時間ほど巡るゴースト・ウォークです。数百年前に起きた歴史的悲劇や殺人事件などについて、実際にその現場を歩きながら、ブルーバッジガイドの男性が迫真の演技で語ってくださいました。わたくしはあまりの怖さに、ソフィー嬢の腕にずっとしがみついておりました…。ホラー映画が苦手であるにもかかわらず、このツアーに参加してしまったことを後悔した次第です。

それにしましても、以前シェイクスピアの故郷のストラトフォード・アポン・エイヴォンへまいりました際にも、ブルーバッジガイドの方が案内してくださるウォーキングツアーに参加し、とても勉強になったのですが、この「ブルーバッジガイド」とは一体どういう方なのでしょう? 興味がわきましたので、調べてみることにいたしました。

ブルーバッジガイドが所属する観光ガイド団体「The Guild of Registered Tourist Guides」に問い合わせましたところ、広報担当の女性が丁寧に対応してくださいました。

その女性によりますと、ブルーバッジガイドとは、英国政府公認のガイド資格を持つ『プロ』の観光ガイドとのこと。その名の通り、ガイドをする時には資格所有者の証となる「青いバッジ」を身につけることが義務づけられているそうです。現在、英国内にブルーバッジガイドは約2000人、ロンドンでは500人ほどがおられるのだとか。この制度は、第二次世界大戦中に爆撃を受けた場所を案内する「専門ガイド」の育成のため、1950年に7人の観光ガイドの提案で制定されたものなのですよ、とおっしゃっていました。

「ブルーバッジガイドになるには、どのような手続きが必要なのでしょう?」とうかがいますと、「資格取得のためのコースを受講していただくことになります」とのお返事。まず英国についての基礎知識テストを受けた後、面接による適性検査があるそうです。これらに合格すれば、コースの受講が認められます。授業では、英国の歴史・建築・美術・文学・宗教・地理・産業など、あらゆることを学びながら、実際に街を歩いて実地研修をしたり、ボイストレーニングやファーストエイド(応急救護手当て)の訓練も行ったりするとのこと。こうして2年ほど研修を重ねた後、観光業界の代表者や現役のブルーバッジガイドが試験官となって実施される最終試験に合格した人だけが、栄えある「ブルーバッジガイド」になれるのだそうです。

ちなみに、ブルーバッジガイドの認定はロンドン、イングランド(ロンドン以外)、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの5地域で独自に試験が行われており、バッジのデザインもそれぞれ異なるようです。

それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成28年7月4日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年9ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。