徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2016年6月10日

何ゆえ、ロイヤル・アスコットは王室主催なんですの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

お父様、お変わりございませんでしょうか?

先日、エドワーズ夫人のご友人(メアリーさんとおっしゃいます)のお宅があるスペインのマヨルカ島へ、一週間ほど遊びに行ってまいりました。中世の面影を残すポレンサという町をのんびりと観光したり、4メートルほどの高さに育ったサトウキビ畑の中の一本道を馬に乗って駆け抜けたりと、本当に楽しい休暇を過ごすことができました。マヨルカ島の馬は英国の馬よりも小柄でしたので、とても乗りやすく思いました。

さて馬と言えば、もうすぐ王室主催の競馬「ロイヤル・アスコット(Royal Ascot)」が始まります。ロイヤル・アスコットとは、ウィンザー城から30分ほどの場所にあるアスコット競馬場で、毎年6月第3週に開催されるレースのこと。テニスのウィンブルドン選手権やヘンリー・ロイヤル・レガッタ、ゴルフ全英オープンなどと並ぶ夏の一大イベントで、今年は6月14日~18日までの5日間です。

「英国紳士淑女の社交場」としても知られており、競技場にはシルクハットとモーニング姿の男性や、華やかな帽子とフォーマル・ドレスで着飾った女性が一堂に会し、大変華やかな雰囲気に包まれます。王室主催ですので、熱心な「競馬ファン」である女王陛下をはじめ、王室メンバーのみなさまもウィンザー城から馬車に乗って来場されるのですよ!

それにしましても、競馬はギャンブルの一種であることに変わりはございません。王室が正式に主催する競馬は世界でも珍しく、一体なぜ英王室はこのようなレースを催すことにしたのでしょう? 大好きな馬のことですから、疑問をそのままにしておくことはできず、ロイヤル・アスコットの広報部に問い合わせてみることにいたしました。

広報担当者の女性によりますと、ロイヤル・アスコットの起源は300年以上前にさかのぼるとのこと。1711年、読書や芸術よりもスポーツ、とくに乗馬を好んだとされるアン女王が、滞在していたウィンザー城から馬で遠乗りに出た際、ヒースが繁る広大な荒野を発見しました。そして、女王は「この場所こそ、馬が全速力で走るのにふさわしい!」とおっしゃったとか。女王はこの地に競馬場の建設を命じ、なんと早くも、その年の8月に王室主催で第1回のレース「Her Majesty's Plate」が開かれました。競走馬の必要条件は6歳以上の牡馬とせん馬(去勢馬のことです)で、7頭が出走したそうです。

これ以降、レースは毎年開催されるようになり、1768年に開催日程が4日間に延長されました。2002年には、エリザベス女王の即位50年を記念し、さらに1日延長して5日間となったようです。本来は、この開催日程の延長は1年限りの予定だったそうですが、好評だったことから、翌年以降も5日間行っているとのことでした。

今年はエドワーズご夫妻と一緒にテレビで観戦するつもりでおりますが、来年はぜひアスコット競技場へ足を運びたいと思っております。

それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成28年6月6日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年8ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。