徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2016年3月24日

何ゆえ、エイプリル・フールには
ウソをついてもよいのでしょう?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

お父様、お変わりありませんでしょうか? 東京では桜の開花宣言が出たようですね。ロンドンも急に春めいてまいりました。季節の変わり目は風邪を召されやすいので、どうぞご自愛くださいませね。

本日はまた、新たに知りました英国の習慣についてご報告したいと思います。

もうすぐ4月に入りますが、4月の大きな行事といえば、日本では入学式、英国では女王陛下の誕生日がございます(実際の誕生日は4月21日、君主としての公式誕生日は6月です)。ですが、日英どちらも共通の行事がひとつだけあります。4月1日のエイプリル・フールです!

エイプリル・フール(April Fools' Day)とは、「毎年4月1日はウソをついてもよい」とされている風習のこと。日本ではあまり重要視されておらず、大人になりますと忘れがちなイベントのひとつだと思いますが、ユーモアのセンスに富んだ英国人の間ではどうやら異なるようなのです。国をあげて様々なウソが飛びかい、みんなでそれを楽しむのだとか。それにしましても、一体なぜエイプリル・フールが「ウソをついてよい日」となったのでしょう? 好奇心がむくむくと頭をもたげてまいりましたので、調べてみることにいたしました。

多くの資料をあたりましたが、正確な起源はわかっていないようでした。ですが、少なくとも16世紀の文献には、その名が登場しているようです。記されていたのはフランスの文献で、当時のフランスでは3月25日を新年の始まりの日とし、4月1日まで新春を喜ぶ祝祭を開いていたとのこと。ところが1564年、フランス国王シャルル9世が1月1日を新年とする新しい暦(グレゴリオ暦)を導入。これに反発したフランス市民が、4月1日を「ウソの新年」と定めて大騒ぎしたそうです。シャルル9世はこの事態に憤慨し、「ウソの新年」を祝った人々を次々と処刑しました。市民たちは、国王への抗議とこの悲惨な事件を忘れないように、以降も毎年4月1日は盛大に「ウソの新年」を祝い、これがエイプリル・フールの起源として、もっとも有力な説とされています。残念ながら、今回は英国が発祥ではございませんでした…。

さて、英国でのエイプリル・フールの風習は、4月1日の午前中に行われることが多く、新聞、テレビ、ラジオなどでウソを体験(?)することができます。少々滑稽で、わかりやすいものが多く、昨年のある全国紙では、大手スーパーマーケット「テスコ」がトランポリンを使った通路を建設中と報道。一番上の棚にも容易に手が届き、楽しく効率よく買い物ができるという記事を載せていました。ほかにも、動物保護施設がロンドンを彷徨っていたライオンを捕獲し、エイプリルと名付けたというもの(名前でウソだとわかります)や、5ポンド札にはサイモン・コーウェル、10ポンド札にはデヴィッド・ベッカム、20ポンド札にはヘレン・ミレンの顔が印刷されると発表した新聞もあったそうです。今年はどのようなウソがお目見えするのでしょう。今からワクワクいたします。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成28年3月21日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年半。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。