筆者 ● デンゾー・タカノ
豪州、米国などでの勤務を経て、今は「現地の会社」で 管理職として働く壮年サラリーマン。もちろん日本人。 趣味は散歩、DIY、ゴルフ(修行中)。
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| 傍目三目:正しくは「傍目八目 (おかめはちもく)」。 他人の囲碁を傍で見ていると、実際に対局している時よりずっとよく手が読めるということ。転じて、局外にあって見ていると、物事の是非、利・非利が明らかにわかること(以上「広辞苑」より)をいう。ここでは、八つも先の目とはいわず、三つ先くらい、の意味で「三目」とした。
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ロンドン郊外の広々とした「工業団地(Industrial Estate」(せいぜい二階までの高さの建物群が、広い緑地内にゆったりとした間隔で配置されていることが多い)の一角に、弊社の白いオフィスビルがある。外を通りかかる人たちは、その中ではさぞかし「現代的、かつ国際的なビジネスが機能的に展開され、事業は着々と発展しつつあるのだろう」と想像するかもしれない。
ところがどっこい、人間が集まる所では、相も変らぬ人間臭い悲喜劇が毎日のように繰り返されるもので、弊社もその例外ではない。今回は、その人間ドラマの一幕である人種差別にふれ、差別される側にいる者の不運と、そして差別する側の英国人たちの能天気ぶり(軽薄でむこうみず。のんきでばかげている状態)についてお伝えしたい。差別的な内容に不快感を覚えられる読者もあるかもしれないが、これも実際に現場で起きている日常の一部であるから、批判の声があがることも覚悟の上であえて筆を進めさせていただく。
しかし、小生はこれをもって英国人を非難、糾弾しようというものではない。我々日本人も、日本にいるガイジンたちに平気で差別語を投げつけたり、内輪ではガイジンに対して、結構、厳しい人種差別的な表現や批評をしたりしているのが実情だ。つまり、人間は、人種を問わず、知らない者や、慣れていない人たちには動物的(本能的)な嫌悪感を抱きやすく、差別的になるのは仕方のないことだと考えるべきだろう。とはいえ、感情的にはそう簡単には割り切れるものではないが。
さて、弊社のように長年、英国に根をおろして営業していると社員の多くは地元の英国人だが、マイク・サイトウのような日英ハーフも時々入社してくる。彼はセールス・エンジニアの見習いとして入社したが、どちらかというと、日本人の体格と容貌の方が強く出たハーフだった。
英国でも、ハーフというだけで苦労を強いられることが少なくない。英国人には自分たちの仲間とは思われず、現地在住の日本人にも、やっぱりホントの日本人でないということで敬遠されたりするからだ。ちなみに、東洋人と白人、黒人と白人のハーフは、白人同士のハーフに比べて、さらに苦労が多いようだ。
マイクはセールス・エンジニアだから当然、社用車を貸与されるが、これが一部の古参社員には我慢のならないことだったらしい。マイクが朝、会社の駐車場にピカピカの新車で乗りつけたところ、丁度そこにいた白人倉庫係、定年間近のハリーが、「You
Orientals can drive, can't you ! (東洋人でも運転、できるもんなんだね!)」 と皮肉ったらしい。
カンカンに怒ったマイクは、殴りかかろうとして他の同僚に止められたとのことだが、ハリーが「Orientals(オリエンタル)」 を日本人も含めた東アジア人に対する蔑称として使ったのは明らかだった。ハリーにとって、英国人の血が半分しか入ってないマイクへの最大限の侮辱だったのだろう。
六ヵ月後、そのマイクが顧客訪問した後、M25号線という高速道路で交通事故を起こしてしまった。無残に車体が凹んだ車でようやく帰社したマイクに、例のハリーが(倉庫は駐車場に近い)、「You
Orientals can't even drive straight !(東洋人は、まっすぐ運転できないんだな!)」と、言ったのが悪かった。事故で気がたかぶっていたマイクは、いきなりハリーの顔にパンチを見舞い、ハリーの唇が切れて血が流れたとのことだった。
その一部始終の報告を聞きながら、東洋人蔑視の傾向のあるハリーに心の中で「ざまミロ」と言いつつ、一方ではこのオチ(処置)をどうつけるか、頭は忙しく回転していた。なんとかマイクを救済する方法はないものかと会社付きの弁護士に相談したが、社内で暴力を振るった者は、結局、英国の法と慣習では、懲戒免職しか方法がないことを知り、「泣いて馬謖を斬る(※)」心境でマイクを解雇した。
アレヨ、アレヨというまに解雇される羽目になってしまったマイクはさぞかし口惜しかったろうが、常に良い人材を渇望している会社(小生)もホント、口惜しかった。若くて元気がよくて、メカ好きの男だったから、いいセールス・エンジニアになっていただろうに!
あぁ、(もう一度言うが)惜しいことをしたよなー。
※情として処分するに惜しい人物であっても、違反があったときには全体の統制を保つために処分すること(「三国志」より)。
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