ボンド映画あれこれ

ショーン・コネリー
初代  ショーン・コネリー
Sean Connery
主演回数:6回 (第1〜5作、7作)

007といえばこの人。映画ファン投票などでも「最高のボンド役」として選ばれるなど人気は根強い。 キャスティングの時点では無名の俳優で、とくにフレミングは「図体だけ大きくて野暮ったい」と彼の起用に乗り気でなかった。 しかし、フレミングの女友達はコネリーの魅力を認めており、1作目の『ドクター・ノオ』を見てフレミングも納得。 同作は原作ボンドを凌ぐまでに大ヒットし、渋くて甘いマスクのコネリーは、まさしくボンドの顔となった。

ひと口メモ
ここに挙げたのはイオン・プロダクションによるボンド・シリーズに主演した歴代ボンドたち。コネリーはフレミングのかつての共同脚本執筆者であったケビン・マクローリーに依頼され、ボンド役を離れて10年ぶりにもうひとつのボンド作品『ネバー・セイ・ネバー・アゲイン』(83年、ワーナー・ブラザーズ)に主演している。この作品は「007シリーズの本家本元は私たちだ」というイオン・プロダクションとの法廷問題にまで発展。マクローリーはその後もイオン・プロに対抗して新たなボンド映画の製作を試み、法廷闘争を巻き起こしている。「ネバー・セイ・ネバー・アゲイン」は、「もう二度とボンド役はやりたくない」というコネリーに妻が「『決して』とは決して言わないことよ」と諭し励ましたことに由来する。

ジョージ・レーゼンビー
2代目  ジョージ・レーゼンビー
George Lazenby
主演回数:1回 (第6作)

歴代ボンドの中で唯一、英国出身・育ちでなくオーストラリア出身の俳優。アクションの上手さを買われ抜擢されるが、演技の経験がなく、イギリス英語もつたない彼は、撮影現場でトラブルメーカーだったにもかかわらずギャラアップを要求したため、1作で降板。しかし彼の主演した『女王陛下の007』は、ボンドの生涯で1度の結婚、新妻の死など悲劇的で人間臭いストーリー展開になっており、ボンド映画の中でも最もボンド映画らしい作品のひとつとして評価されている。

ロジャー・ムーア
3代目  ロジャー・ムーア
Roger Moore
主演回数:7回 (第8〜14作)

野性味あふれるボンド像がコネリーなら、スマートで知的なボンド像にはまり役なのがロジャー・ムーア。洗練された雰囲気があり、フレミングが最初からボンド役に推していた俳優だ。多くの女性ファンを魅了し、ボンド俳優の中で最多の主演本数を誇る。彼の演じた作品は大掛かりなスペクタクル・アドベンチャーに彩られ、アクションが多く、自称「運動音痴」のムーアはスタントマンの吹き替えを多用せざるを得なかったという。

ティモシー・ダルトン
4代目  ティモシー・ダルトン
Timothy Dalton
主演回数:2回 (第15、16作)

第6作目、第12作目の時にもオファーは来ていたが「自分は若すぎる」といって断っていたダルトン。3度目のラブコールで了承し、2作を好演した。故ダイアナ妃が「原作にもっとも近いボンド」と絶賛したことでも有名で、ムーア時代のスペクタクル劇から一転、ボンド作品を人間味のある英国スパイ作品に引き戻した。原作を熟読したファンには正統派ボンドと呼ばれている。

ピアース・ブロスナン
5代目  ピアース・ブロスナン
Pierce Brosnan
主演回数:4回 (第17〜20作)

前代ダルトンの作品は批評家から高い評価を得たものの興行的に芳しくなく、シリーズは一時中断、5年以上ものブランクがあいていた。紳士的でワイルド、しかもセクシーという3拍子揃ったボンドを好演し、衰えていたボンド映画に再び人気の火を点したのがブロスナン。私生活では第12作のボンド・ガール、カサンドラ・ハリスと結婚しており(91年に死別)、04年にアメリカ市民権を得て20年以上アメリカに在住。

ダニエル・クレイグ
6代目  ダニエル・クレイグ
Daniel Craig
主演回数:2回 (第21作〜)

シリーズ始まって以来の金髪ボンドの誕生にとまどうファンも多く、前評判の良くなかったクレイグ。だが、いったん映画が公開となると迫力のあるアクションや人間味のある演技が高い評価を得、ボンド作品の中で最高の興行成績を記録した。また、ボンド役で初めて英国アカデミー賞主演男優賞にもノミネートされた。11月公開予定の新作が待ち遠しい。

日本での撮影秘話

 1967年に公開となった「007は二度死ぬ」は日本を舞台にしており、丹波哲郎や浜美枝、若林映子といった日本の俳優を起用し、日本で撮影が行われた貴重な作品。

 原作『You Only Live Twice』をもとにしており、原題はフレミングが来日した折に松尾芭蕉の俳句にならって詠んだ詩、「you only live twice: once when you're born, and once when you look death in the face」からとったもので、小説の中ではジェームズ・ボンドが友人のタイガー・田中に捧げたという設定で登場している。

 実は、この「007は二度死ぬ」、関係者の多くが事故死したことでも知られる。

 66年3月5日に英国海外航空(BAの前身)のボーイング707型機が富士山付近の乱気流に巻き込まれ、空中分解し乗員乗客全員が死亡した惨事を記憶している読者もいるかも知れないが、同機には英国に帰国しようとしていた撮影スタッフが含まれていたのだ。

 監督のルイス・ギルバート、製作のサリー・ハルツマン、アルバート・ブロッコリなど、トップ関係者の五名も同機に搭乗する予定だったが、出発の二時間前に、忍者指南のための忍者パフォーマンスが急遽行われることになり、帰国をキャンセルしたためこの五名は難を逃れた。

 その他、ヘリコプターを使って空中戦を行うシーンの撮影で、英人カメラマンが片足を切断してしまうという事故も起きている。

日本でのロケ地

都内
旧蔵前国技館、銀座四丁目交差点、ホテルニューオータニ、営団地下鉄丸ノ内線、営団地下鉄丸ノ内線中野新橋駅、駒沢オリンピック公園、代々木第一体育館付近
国内
富士スピードウェイ、姫路城、鹿児島県坊津町、霧島山新燃岳

ジェームス・ボンドはイギリス映画?アメリカ映画?

 21作ものボンド映画を生み出してきたイオン・プロダクションは、アメリカの映画プロデューサー、アルバート・R・ブロッコリによって設立されたとはいえ、ロンドンのピカデリーに事務所を構え、バッキンガムシャーにあるパインウッド・スタジオで撮影を行う、正真正銘の英国の会社。ボンド映画は出演俳優も制作スタッフも英人が多く起用され、プレミア公開もロンドンで先行される。また、ロイヤル・ファミリーも列席することもあるなど、由緒ある英国映画とみなされてきた。

 しかし、それも第10作目までの話。第1作目から配給会社として携わってきたハリウッドのユナイテッド・アーティスツが共同制作まで担うようになると純粋な英国映画と呼べないのではという意見も出てきた。そのため第11作目以降からは英米合作とするのが一般的で、最近作の「カジノ・ロワイヤル」のように英米にドイツ、チェコも加わり、四ヵ国の合作とされているケースもある。ちなみにユナイテッド・アーティスツは買収され、現在ソニー・グループのコロムビアが共同制作会社となっている。


左からフレミング、プロデューサーのハリー・サルツマン、ブロッコリ両氏。© Getty Images

もうひとつの「カジノ・ロワイヤル」

フレミングがすべての著作の映画化権をイオン・プロに売る以前に、「カジノ・ロワイヤル」の映画化権を別の人物に売却していたせいで、イオン・プロは「カジノ・ロワイヤル」を映画化できなかった。同作はコロムビアが制作権を獲得し、1967年にジョン・ヒューストンら5人の監督によりピーター・セラーズの主演で、ジェームズ・ボンドのパロディ作品として奇異なドタバタコメディに仕上がった。

ウッディ・アレンもちょい役で出演しているというこの映画、公開当時はそれほどヒットしなかったものの、60年代のポップ・カルチャーを反映した貴重な映画として、80年代以降評価が高まり、映画『オースティン・パワーズ』などにも多大な影響を与えたことで知られる。


Casino Royale (1967) DVD

EON Productionsによるボンド映画一覧

英語タイトル日本語タイトル製作年主題歌 歌手
Doctor No『ドクター・ノオ』(1962年)ジェームズ・ボンドのテーマ
From Russia With Love『ロシアより愛をこめて』(1963年)同名 マット・モンロ
Goldfinger『ゴールドフィンガー』(1964年)同名 シャーリー・バッシー
Thunderball『サンダーボール作戦』(1965年)同名 トム・ジョーンズ
You Only Live Twice『007は二度死ぬ』(1967年)同名 ナンシー・シナトラ
On Her Majesty's Secret Service『女王陛下の007』(1969年)We Have All the Time in the World ルイ・アームストロング
Diamonds Are Forever『ダイヤモンドは永遠に』(1971年)同名 シャーリー・バッシー
Live and Let Die『死ぬのは奴らだ』(1973年)同名 ポール・マッカートニー&ウィングス
The Man with the Golden Gun『黄金銃を持つ男』(1974年)同名 ルル
The Spy Who Loved Me『私を愛したスパイ』(1977年)Nobody Does It Better カーリー・サイモン
Moonraker『ムーンレイカー』(1979年)同名 シャーリー・バッシー
For Your Eyes Only『ユア・アイズ・オンリー』(1981年)同名 シーナ・イーストン
Octopussy『オクトパシー』(1983年)All Time High リタ・クーリッジ
A View to a Kill『美しき獲物たち』(1985年)同名 デュラン・デュラン
The Living Daylights『リビング・デイライツ』(1987年)同名 アーハ
License to Kill『消されたライセンス』(1989年)同名 グラディーズ・ナイト
GoldenEye『ゴールデンアイ』(1995年)同名 ティナ・ターナー
Tomorrow Never Dies『トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997年)同名 シェリル・クロウ
The World Is Not Enough『ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999年)同名 ガベージ
Die Another Day『ダイ・アナザー・デイ』(2002年)同名 マドンナ
Casino Royale『カジノ・ロワイヤル』(2006年)You Know My Name クリス・コーネル
Quantum of Solace『クォンタム・オブ・ソラス』(2008年)未定(2008年3月31日現在)

ボンドガール

ボンド作品に欠かせないスパイスとなっているのが、セクシーでミステリアスなボンド・ガール。 2006年に英エンターテインメント系会社が行った調査によると、「ボンド・ガール ベスト10」は右のとおり。 ( )内は役名。第5作の『007は二度死ぬ』(1967年)に登場した浜美枝と若林映子がランクインしていないのが残念!


写真はすべて © Danjaq, LLC and
United Artists Corporation
1位ウルスラ・アンドレス
(ハニー・ライダー)
『ドクター・ノオ』(1962年)
2位オナー・ブラックマン
(プッシー・ガロア)
『ゴールドフィンガー』(1964年)
3位ダイアナ・リグ
(トレイシー・ディ・ヴィンチェンゾ)
『女王陛下の007』(1969年)
4位ハル・ベリー
(ジンクス)
『ダイ・アナザー・デイ』(2002年)
5位キャロル・ブーケ
(メリナ・ハヴロック)
『ユア・アイズ・オンリー』(1981年)
6位ソフィー・マルソー
(エレクトラ・キング)
『ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999年)
7位イザベラ・スコルプコ
(ナターリャ・シモノーヴァ)
『ゴールデンアイ』(1995年)
8位ミシェル・ヨー
(ウェイ・リン)
『トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997年)
9位バーバラ・バック
(エージェントxxx)
『私を愛したスパイ』(1977年)
10位ジェーン・シーモア
(ソリテア)
『死ぬのは奴らだ』(1973年)