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四万年のなが〜い歴史
釣りの起源はきわめて古い。
少なくとも中期旧石器時代の終盤、紀元前四万年ごろには始まっていたという説が有力だ。人類が農耕生活をスタートさせたのは今から約一万五千年前とされ、それまでは、木の実などの採集、狩猟とならび、漁労によって人類は生きる糧を得てきたのである。川も海も、我々の大先輩たちにとっては、生死を左右するほどの貴重な存在だったのだ。
中石器時代、新石器時代、青銅器時代、鉄器時代…と、文化が高度化するにつれ、魚を捕獲する技術も発達していった。例えば、古代エジプト文明(紀元前三千年ごろ―紀元前三一年)においては、ナイル川は魚の宝庫として名高く、漁労の様子が墓所やパピルスに数多く描かれ、当時すでに、魚をさばき塩をふるという作業が行われていたことが分かっている。さらには、「楽しみ」としての釣りが始まっていたことを伺わせる図も残されているという。
また、中国のことわざに、こんなものがあるそうだ。
一時間幸福になりたいのなら、 酒を飲みなさい。
三日間幸福になりたいのなら、 結婚しなさい。
一週間幸福になりたいのなら、 牛を飼いなさい。
一生幸福になりたいのなら、 釣りをしなさい。
結婚による幸せは三日しかもたないのか…、とか、愛する人といっしょになるより、牛を飼ったほうが長く幸せでいられるのはなぜ…、といった余計なことまで考えたくなることわざだが、釣りに関してのくだりに納得する人はこの世に数多くいることだろう。
ちなみに、日本の財団法人経済生産性本部の「レジャー白書二〇〇七」によると、〇六年の日本における釣り人口は、男女合わせて千七十万人。一方、〇七年の英国における釣り人口は約四百十万人。人口比でみてみると、日本は全人口の約八%、英国では約七%が釣りを趣味としていることになり、いずれにしても「自分で実際に参加する屋外スポーツ」の中では、高い人気を誇ると分析されている。
英国の釣り人口についてもう少し見てみると、川や湖での釣りを好むのは二百六十万人、海釣りファンは百五十万人とされている。今号では、船で沖に出かけるという楽しみも同時に味わえる海釣りを選び、この百五十万人の仲間入りを果たしたいと思う。
めざせ、アングラー・デビュー
どこで釣るか、その場所によって釣りは大きく二つに分けられる。
川、湖など淡水(freshwater)で行う釣り、そして海水(salt-water)で行う釣りである。
前者はさらに、渓流釣り(日本ではヤマメ、イワナ、ニジマスなどが人気)、川の中・下流での釣り(日本ではアユ、コイなど。英国では、海で育ってから川に戻ってきたサケを釣る、サーモン・フィッシングが有名)、湖沼・池での釣り(日本ではヘラブナ、ブラックバスなど)といった具合に、場所によって分けることができる。
このうち、川を『舞台』とする英国のサーモン・フィッシングは、「fly」と呼ばれる色鮮やかな毛ばりを用いることから「フライ・フィッシング」と呼ばれ、上流階級の紳士のスポーツとしても広く知られる。もっとも、女性にもファンは多く、エリザベス二世の母君、故クイーン・マザーも愛好者だった。長い竿をしならせ、毛ばりをつけた長い釣り糸を遠くへ投げ込む優雅なスタイルを身につけるには、お金と時間が必要なようだ。
この「フライ・フィッシング」については、概要を紹介するだけでも別に特集記事が必要なほど奥が深い。今号は、超初心者向け海釣りガイドと位置づけて書いている都合により、これ以上触れずに先に進むことをお断りしておく。
さて、海水での釣りについて絞り、話を続けよう。
海水での釣りにもいろいろある。
河口、砂浜、防波堤(別名「波止」、「堤防」)、磯(岩場のこと。ボートで渡してもらう必要のある所が少なくない)、沖と、場所によって釣れる魚も異なる。このうち、今回の特集で挑んだ英国での沖釣りは、「inshore
fishing」または「ground fishing」と呼ばれる、岸に比較的近い海を釣り場とするものと(以降は「ground fishing」で統一する)、岸から離れた海上で大物を狙う「wreck
fishing」に大別される。後者の「wreck」は沈没船などを指し、こうした海に沈んでいるものや、海底の亀裂が魚の絶好の住みかとなることから名付けられたようだ。
では、具体的にどうすれば釣り人(アングラーAngler)の仲間入りが果たせるのか――。筆者のような超初心者が「仲間入り」などと書くと、釣り愛好家の人々からお叱りを受けそうだが、どんな名アングラーにも初日はあったはず。その初日を迎えるための方法を、「ground
fishing」に関して、順を追ってまとめてみる。
クリアすべきは三つの「W」
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海釣りファンに人気の月刊誌「Sea
Angler」。最新の釣り用具に関する情報から、自慢の釣果を写真つきで投稿するコーナーまで、内容は多岐にわたり充実。英国海釣り事情を知るうえでも興味深い刊行物だ。
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どこへ(where)、いつ(when)、誰と(with whom)出かけるか。なにはともあれ、これら三つの「W」について決める必要がある。
@ どこへ行くか WHERE
島国であるため、沖すべてが釣り場といえる英国だが、大多数の読者がロンドン在住であることを考慮し、南イングランドについてのみ紹介することにしよう。沖釣りに出かけるには、まず釣り船(boat)を確保することが第一歩。十人乗り程度の船を、八時間、チャーター(貸し切り)するのが一般的だ。右ページの地図にあるように、東はドーヴァーあたりから西のウェイマスあたりまで、釣り船が発着するマリーナが点在する。初心者にお薦めなのは、以下のマリーナ。
●ブライトン(Brighton)…今回、利用したのはここ。詳しくは次ページをご参照あれ。
●リトルハンプトン(Littlehampton)…マリーナは小さいながらもチャーター船の数は充実。
●リミントン(Lymington)…各チャーター船の船頭さん(スキッパーskipper)に相談すれば、釣りと、ワイト島沖の観光を組み合わせた一日ツアーを組んでもらうことも可能。有名な「ニードルズ(Needles)」を海から眺めるのは圧巻。釣りだけでは退屈しそうな子どもを連れていく際には、一考する価値あり。
●プール(Poole)…釣り人以外にはあまり知られていないようだが、プール沖は景勝地としてもレベル高し。
●ウェイマス(Weymouth)…ブライトン、プールなどと同様、マリーナにある釣り具センター(本ページのコラム参照)に電話をすればチャーター船の手配も引き受けてくれるので便利。
チャーター船の予約は最低一ヵ月前には済ませておきたい。単独で参加し、他のグループにまじって出かけるのも苦にならないという釣り愛好家なら、「相い乗り」をさせてもらう方法もある。各チャーター船のスキッパーに直接電話をして交渉するか、前述の各マリーナにある釣り具センターに電話をかけて相談すれば、二週間ほど前でも「席」が確保できることもある。
A いつ行くか WHEN
本ページ下部にある、南イングランド近海「おさかなカレンダー」を参考にしていただきたい。ただし、これはあくまでも目安。近年、深刻な社会問題となっている地球温暖化などにより、英国近海の水温に変化が生じると、捕獲される魚の種類、捕獲シーズンにも影響することは覚えておきたい。子供づれのご家族や初心者にお薦めしたいのは、気候面でも比較的恵まれる五月から九月あたり。もちろん、冬場は冬場で、違う種類の魚を対象とした釣りが楽しめることはいうまでもない。
B 誰と行くか WITH WHOM
友人同士、同僚同士、あるいは二家族、三家族で船をチャーターする場合、グループ内に、ひとりでも釣り上級者(せめて中級者)がいると心強さが格段に違う。親切なスキッパーに巡り合うことができれば、いろいろ指導してもらうこともできるが、用意すべきものや船上でのエチケットなど、細かいことまで教えてもらえるとは限らない。まわりを見渡せば、師匠と呼びたくなるような人がひとりくらいは見つかるはず! そういう人のアドバイスは素直に聞いて精進したいもの。
最後に、優秀なアングラーになるためのヒケツはあるかないかについて。今回、筆者に根気強くいろいろ教えてくれた、スキッパーのアラン・ヤング氏に訊ねたところ、彼はにっこり笑ってこう答えてくれた。
「Keep your faith!(信念を持ち続けることさ!)」
その言葉を胸にチャレンジした、筆者の釣り初体験についてのレポートをお届けしたい。
南イングランド近海 おさかなカレンダー

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